背景:
超音波探傷試験のアプリケーションの多くは、いくつかの良く知られたカテゴリに分類されていますが、テクノロジーの可能性の範囲が広く、新しい試験が絶えず開発され導入されています。オリンパス産業システム機器ウェブサイトの用途/事例(アプリケーション・セクション)では、超音波厚さ測定、探傷、および材料分析の一般的な用途を紹介しています。ただし、溶接部や構造物の検査、腐食検査、精密厚さ測定といった従来からの主要分野の他にも、多くの専門的アプリケーションや特殊アプリケーションもあります。このアプリケーション・ノートでは、当社の標準的な市販機器で適用可能な、あまり一般的ではないいくつかの試験の概要を紹介しています。これらのアプリケーション・ノートでは、可能性の一部を簡単に紹介することのみを意図しています。推奨機器や手順を含め、ここに記載されている試験の詳細については、当社にお問い合わせください。
超音波厚さ測定の最も初期の「型破りな」アプリケーションの1つが、40年以上前に報告された、生きた豚の脂肪分と脂肪のない肉の厚さを測定し、市場価値を評価することでした。また、適切な探触子を準備して正しくセットアップすれば、肉牛の肉厚と家禽の胸肉厚を測定することも容易に可能です。研究目的では、海洋哺乳類の専門家がPanametrics-NDTの超音波探傷器を使用して、クジラの脂肪の厚さを測定しました。
パルス/エコー・モードでコンクリートを片側から試験するには通常、オリンパスNDT製品ラインナップでは対応ができません。専門性が高く、極低周波数の超音波やインパクト/エコーを使用する装置が必要です。しかし、両側へのアクセスが可能な場合は、透過法で超音波探傷器もしくは高ゲインのパルサーレシーバーを使用して硬化を追跡したり、圧縮強度などの機械的特性をモニターすることができます。通常は、数100mmのコンクリートを貫通する透過伝搬が可能です。
エポキシ樹脂、接着剤、そしてグラスファイバーや複合材料の結合剤として使用される樹脂などの材料は、液体状態と固体状態の間で遷移する際に、大きな音速の変化を示します。したがって、特定の材料に対する校正曲線を確立すれば、厚さ計または探傷器による音速の測定を使用して、硬化状況や硬化速度をモニターすることができます。
適切な探触子と計測機器(厚さ計または探傷器)を使用して、片側から氷の厚さを測定することが可能です。アプリケーションとしては、実験室条件での航空機の翼への着氷研究、池や湖での氷厚測定、クーラーや他の工業プロセスにおける着氷研究、および氷河コア試料の弾性率などの材料特性分析などがあります。氷の測定における制約条件は、一般に、表面の滑らかさや氷中の気泡濃度あるいは亀裂による影響です。厚い氷を測定する場合、特に自然界における測定では、これらが重要な制約条件となる場合が少なくありません。
石油精製工程における水面上の油層など、別の液体上に浮いている非混和性液体の深さを超音波で測定することができます。これは通常、厚さ計または探傷器のいずれかで行われ、液体と液体の界面エコーから上方に存在する空気との界面エコーまでを測定します。超音波を使った液体レベル計測では、液体表面は穏やかで波や過度の気泡があってはなりません。
超音波の音速と減衰の測定を使用して、弾性率および密度変化、そして結晶粒構造や粒度分布などの材料特性を計算することができます。鋳鉄の黒鉛球状化率、プラスチックの重合、プラスチック内の水分、液体の混合比、および他の多くの物理的特性とプロセス・パラメーターを超音波で推測することができます。このテーマの詳細については、オリンパス産業システム機器ウェブサイトの技術情報『Introduction to Ultrasonic Material Analysis.(超音波材料分析について)』を参照してください。
オリンパスNDTが提供する工業用超音波検査製品は、医療診断や他の臨床用途には不向きですが、当社のパルサー/レシーバー、探触子(トランスデューサー)、厚さ計は、ソフトとハードの両方が関与する多様な生物医学研究用途に採用されてきました。これらには、皮膚層、筋肉、脂肪、および角膜組織の厚さ測定、そして骨の完全性の評価に応用できる音速測定が含まれます。医療機器の製造現場でも、超音波厚さ計と探傷器を使用して、カテーテル・チューブ、ペースメーカー・ケース、プロテーゼ、インプラントなどの品質管理を行い、寸法が公差内であることの確認がなされています。
地質学的材料の機械的特性に関する調査研究では、超音波特性を利用して、硬度、弾力性、および粒構造、そして実験室条件下での土や砂の圧密などの物理的パラメーターを測定しました。低周波数トランスデューサーと高ゲインのパルサーレシーバーによる透過法を使用し、実験用に調整された試料を必要とします。また、フィールド試験は通常、超音波領域よりも低い周波数を用いて実行されます。
音速が異なる2つの混和性液体、または液体に溶解した固体割合が異なる2つの混和性液体の混合比は、多くの場合、得られた溶液の音速と相関させることができます。あるケースにおける正確な相関関係を知るには、既知の組成の標準液を試験することによって決定する必要があります。どんな超音波検査機器でも液体中を進む超音波経路を固定した状態で音速の測定が可能であれば適用可能です。密接に関連した試験には、液体内で懸濁した微粒子の割合の定量化もあり、この試験には音速同様に減衰や散乱の測定が関係する可能性があります。
マイクロエレクトロニクス・メーカーは、Panametrics-NDTのモデル35DLなどの精密超音波厚さ計を使用して、集積回路の製造に使用されるシリコン・ウェハーの正確な厚さ測定を行っていました。高分解能のCスコープ(上面透過図)により、内部の非常に小さな割れを見つけることも可能です。
このアプリケーションでは、検査対象物に対する位置を制御した探触子(トランスデューサー)から部品表面の極小点までの水経路を精密に測定します。水経路長の小さな変化が表面の形状の変化を示します。分解能と所要データ出力速度の度合いに応じて、厚さ計または探傷器のいずれかでこれを行うことができます。複雑な形状の場合は一般に、輪郭に追従するように探触子(トランスデューサー)走査ができる自動化多軸スキャニング・システムが必要です。関連アプリケーションである、近接センシング(例:自動ドアのセンサー)は一般に、オリンパスNDT製品ラインにはない機器を使用して、空気中を伝播する低周波数音波により実行されます。
船上や陸上から、特殊防水探触子と長いケーブル、および標準機器を使用して、水中にある検査対象物の厚さ測定と欠陥検出の両方を行うことができます。代表的アプリケーションとしては、船体および石油プラットフォームの支持部の点検、あるいは水中にあるパイプの腐食残存肉厚測定などがあります。海洋生成物が付着する場合は、表面のクリーニングが必要です。
木材および木材製品の超音波試験には一般に低周波数と高電圧が必要であり、通常は透過伝搬モードで実行されます。アプリケーションとしては、支持杭および電柱での隠れた内部腐敗の検出、積層合板およびパーティクル・ボードの接着の確認、弾性特性の測定などが挙げられます。
これらの試験やその他の超音波試験アプリケーションの詳しい情報については、当社にご連絡ください。