アプリケーション
航空機アルミスキンのスクライブマークやラップジョイントファスナーホールで発生するクラックの超音波フェーズドアレイ検査。
背景
超音波フェーズドアレイ探傷器のユーザーにはビームステアリング機能が熟知されていますが、この機能によりビームそれぞれを異なる屈折角度で生成して、垂直断面を扇形にビーム走査します。ただし、試験によっては、別の方法でステアリング機能を使用し、ビームを横方向(ラテラル)にステアリングします。これを行う場合、屈折角度は固定したまま、ビームのスキュー角が変化します。このプローブとウェッジの構成は、航空機のラップジョイント部スキンの下層面の検査など、一部のアプリケーションに非常に役立ちます。検出される典型的な欠陥は、ファスナーホールから伸びるクラックや、航空機胴体のスクライブマークです。この技法は、クラックがオフアングルの場合(つまり、ビーム方向に対してクラック面が垂直ではない場合)に、大きな利点があります。
フェーズドアレイプローブが取り付けられたラテラルスキャン用のOmniScan
ラテラルスキャンの利点は、ビームを横方向にフォーカスできることです。ビームを横方向にフォーカスすると、(ファスナーホールなどの)外形形状からのエコーとクラックからのエコーの判別が明確になります。またS-スキャンイメージの使用は、オペレータの分析に役立ちます。
機器
• OmniScan MX 16:128 or 32:128
• 下部のファスナー列に沿ってクラックを検出するためのマルチグループ機能(推奨)。使用可能な2つの構成を次に示します。
a.
最初のビーム構成は、0度のスキュー角でのラテラル(横方向)リニアスキャンと、-15~15度のスキュー角でのラテラル(横方向)セクタースキャンを組み合わせたものです。ラテラル(横方向)セクタースキャンはプローブの中心にある16振動子のアパーチャー(開口幅)から生成されます。
ラテラルリニアスキャン(赤線)とラテラルセクタースキャン(青線)
クラックがあるラップジョイントの画像(肉厚1mm)
最初の構成でクラック検出を示すOmniScan画面のプリントスクリーン
ラテラルリニアスキャン(左)、ラテラルセクタースキャン(右)
b. 2番目のビーム構成は、下図に示すように、異なるスキュー角に設定された3つのラテラルリニアスキャンを組み合わせたものです。この例では、スキュー角15度のスキャンでクラックが強く検出されています。この例は、斜め方向のクラックを検出する場合にスキュー角が重要であることを明確に示しています。
3つのラテラルリニアスキャンから成る構成(赤線)
2番目の構成でクラック検出を示すOmniScan画面のプリントスクリーン
-15度(左)、0度(中)、+15度(右)
2. 航空機外翼表面パネル検査
この表面パネル検査は、航空機外翼の上面層と下面層にあるクラックを検出するのに使用します。これらのクラックはファスナーの周囲にある場合や、ファスナーから離れている場合があります。
この検査では、スキュー角0度のラテラルリニアスキャン1つのみを屈折角度45度の横波で使用します。
外翼表面パネルの検査
この構成で手前側と反対側のノッチ検出を示すOmniScan画面のプリントスクリーン
結論
ラテラルスキャン構成は、高い感度でファスナー内のクラックを検出できる可能性があることを示しています。長さ1mm程度の小さいクラックをS/N良く検出でき、異なるスキュー角を使用することで、斜めのクラックの検出が最適化されます。このプローブとウェッジの構成は、他の多くのアプリケーションに使用できますので、あらゆる検査技法の開発時にこの手法も検討評価してみることをお奨めします。