グラビアシリンダー製版の制御に求められる精度は1 μm以上
グラビアシリンダー製版システムは、主に食品、菓子など商品のラベルやパッケージ印刷用シリンダーの彫刻に使用されています。 シンク・ラボラトリーは、1977年にグラビア製版装置System 77を発売して以来、グラビア製版およびシリンダー製版で90%を超える日本国内市場シェアを保持しています。 かつて、印刷用シリンダーは職人が彫刻を施していましたが、シンク・ラボラトリーのグラビアシリンダー製版システムが普及したおかげで、高精度の全自動製造が低コストで可能になりました。
顧客の現場に設置されたシンク・ラボラトリーの自動グラビアシリンダー製版システムFX3の図(画像はシンク・ラボラトリーによる提供)
シンク・ラボラトリーのグラビアシリンダー製版システムは、フォトリソグラフィを使用して印刷シリンダーを製造します。 円筒形の印刷版では、マスクレス露光、つまりレーザー露光が可能です。 3200 × 12800 dpiの高解像度レーザービームは、2 μm × 8 μmの小さなスペースに集束します。 求められる精度は非常に高く、1 μm以上です。 この精度管理を支えるため、オリンパスのDSX1000デジタルマイクロスコープが選ばれました。 開発部部長兼リーダーである菅原申太郎氏は、品質管理検証で重要なことについて次のように説明しています。「例えば、インクを集める最も小さいくぼみは100 μm × 100 μmほどの大きさです。 ほんの少しの違いでインクの濃さにばらつきが出てしまいます。 化粧品産業や自動車産業では、製品に高級感を与える高品質印刷が求められるため、わずか1%のくぼみの大きさの違いによるちょっとした色の変化でも厳しくチェックされます」。
DSX1000マイクロスコープによるサンプル解析で品質と信頼性に貢献
グラビアシリンダー製版システムで製造されたシリンダーを使用った印刷サンプルに欠陥が見つかった場合、グラビアシリンダーと印刷サンプルを顧客から回収して、欠陥の原因を解析します。 DSX1000デジタルマイクロスコープは、保証された精度と1 μmのZ軸繰返し性*により、解析の最初のステップで重要な役割を果たします。 予備解析では、検出された欠陥をDSX1000マイクロスコープで観察して、原因の初期判定を得ます。これを基にして、高倍率観察による解析と、電子顕微鏡を使う元素分析へとつなげます。 特定された欠陥の原因をレポートにまとめて、顧客にフィードバックとして提示します。 |
シリンダーの彫刻に数マイクロメートルの違いがあるだけで、不鮮明な字や色の誤差につながる可能性が生じるため、解析には厳密な基準が設けられています。 シンク・ラボラトリー開発部の吉岡孝氏は言います。「近年、高品質印刷の需要が高まっており、より精度の高い解析の追求と高い効率への期待から、DSX1000マイクロスコープを導入することになったのです」。
QCプロセスの最適化に役立つDSX1000デジタルマイクロスコープの機能
DSX1000デジタルマイクロスコープには、従来品にはない機能が備わっています。 シンク・ラボラトリーが所有するDSX1000マイクロスコープの主要ユーザーである吉岡氏は、感心した機能として次の2つを挙げています。(1)ワンプッシュで複数の観察法を切り替える機能。観察または解析の対象物を見失うことがありません。(2)複数のプレビュー機能。複数の観察法で得られた画像を比較し、最もよいものを選択できます。
1つのボタンで複数の観察法を切り替える
従来のマイクロスコープでも複数の観察法を使用できるものがありますが、DSX1000デジタルマイクロスコープでは6種類もの観察法に対応し、さまざまなサンプルを検査できます(明視野(BF)、偏斜、暗視野(DF)、MIX、偏光、微分干渉)。
複数のプレビュー機能
光学機器メーカーの高性能レンズ
解析作業に使用するレンズタイプは、観察対象サンプルによって異なります。 菅原氏と吉岡氏は2人とも、オリンパスが提供するレンズに満足していました。オリンパスは光学機器メーカーである上、高品質でコストパフォーマンスに優れた広範なレンズラインアップを有しているためです。
従来のデジタルマイクロスコープでは、レンズを交換する際にレンズを外して新しいものを取り付ける必要がありますが、作業は厄介で時間がかかります。 一方、DSX1000マイクロスコープにはスライド式ノーズピースと専用レンズアタッチメントがあるため、マクロからミクロレベルの範囲で目的に合わせてレンズをすばやく切り替えることも、倍率を変更することもできます。
吉岡氏は、この機能の便利さを従来のデジタルマイクロスコープと比較し評価しています。「レンズをすぐに交換できるのは、サンプルを変えた後に倍率を調整するときに便利です。 多種多様なサンプルを観察・解析する場合には特に助かります。低倍率の概観観察の方が欠陥をすばやく見つけやすいためです。 従来のデジタルマイクロスコープでは、レンズ交換時にレンズを穴にねじ込む必要があり、厄介で時間がかかります。一方、DSX1000マイクロスコープのスライド設計ではレンズ交換が簡単になり、レンズを落とす心配がなくなりました」。
17種類の対物レンズのラインアップ | スライド式ノーズピース:レンズが前後に移動 レンズアタッチメントの交換 |
観察パラメーターを保存して時間を節約
シンク・ラボラトリーが大いに期待したのは、DSX1000マイクロスコープが持つ観察条件の取得機能でした。 過去の観察条件を使用して別のサンプルを解析できればとても便利です。 DSX1000マイクロスコープに記録される各画像ファイルには、倍率、照明法、カメラ設定など、観察に使用したパラメーターのデータが含まれています。 これらの条件は、画像をクリックするだけで取得できます。 機能を活用し、その都度最適なイメージング条件を探る手間が省けます。 複数のオペレーターによる観察画像のばらつきや、欠陥の検出漏れも防げるため、解析パフォーマンスが向上します。
まとめ
総合的に、グラビアシリンダーの品質管理プロセスにDSX1000デジタルマイクロスコープを導入したことは、シンク・ラボラトリーが高精度需要に応え、効率アップを実現する上で効果がありました。 デジタルマイクロスコープのメーカーを変更することに最初は少しためらいがあったものの、工業用ビデオスコープや蛍光X線分析計などのオリンパス製品を使用した経験から、シンク・ラボラトリーは切り替えを進めました。 機器の導入後に従業員向けに行われた一連のトレーニングセッションなど、オリンパスによるアフターセールスサービスにも、同社は大いに満足しています。