フォーカス: 背景ハンドヘルド(携帯型)蛍光X線分析計は、住宅地の土壌に含まれ、法規制されている重金属成分や汚染金属成分を測定できる有用なツールとして定評があります。この方法は、非破壊、短時間で質の高い測定が可能で、野外で環境特性を評価するのに理想的であり、特に広い地域を評価するには最適です。実際、米国のEPA Method 6200は、携帯型蛍光X線分析計によるスクリーニングを推奨しています。土壌の試料を数多くきめ細かく採取でき、土壌を正しく評価できるからです。ハンドヘルド(携帯型)蛍光X線分析計は、各種の農業分析にも利用されています。 |
課題
食料供給源の安全性は、人口増加に伴い、ますます重要になっています。食料供給源の農業用地の需要が増えるにつれ、きめ細かい農業や都市近郊農業は当たり前のこととなってきました。しかし、工業施設や都市施設に近い地域で行われている農業には、農作物の安全性について、汚染の危険性のある土壌や用水で育てられていないかという疑問が生じています。
As、Hg、Cu、Cd、Cr、Zn、Pbの濃度の上昇は、冶金、電気メッキ、製鋼を行う工場の 周辺地域で見られます。同様に、石油精製や兵器製造プラント、鋳物工場、造船所などの周辺地域でも見られます。
ハンドヘルド(携帯型)蛍光X線分析計で食料供給源の農業用地に含まれる汚染金属成分を測定
「携帯型蛍光X線分析計は、野外で多数の土壌を測定でき結果がすぐ得られ、その場で汚染の空間的な広がりを推測できます。この分析計は、持ち運びでき、試料を非破壊、短時間で、高品質に測定できるため、土壌や農業科学の調査に理想的です。」とLSUAg Centerの David Weindorf博士は話します。
これらの汚染物質は、都市近郊の家庭菜園の土壌、植物、地下水に浸み込んでいる可能性があります。その上、交通量の多い道路は、概してPb、Mn、Znの濃度を上昇させてきました。これらも、また家庭菜園の土壌に浸み込んでいる可能性があります。
逆に、農作物や家畜用で、かつては規制されていなかった農薬、たとえばAsやPb、がかなり使用されていた農業地域へ都市のドーナツ化現象が進み、残留汚染物質を新興地域の家庭菜園にもたらしています。
これらの汚染物質の濃度と広がりは、土壌の主な成分や生来の動物相に影響される可能性があります。同様に、気候変動、自然の成り行き、人的活動にもたらされる変化にも影響される可能性があります。これらの変化には、溶存有機炭素、土壌や地下水の酸性度、養分や肥料における変動が含まれています。
解決策
多くの調査機関、たとえばLSU Ag Centerの研究チームは、携帯型蛍光X線分析計が都市近郊農業の特性を高品質に評価するのに不可欠のツールであることを明示してきました。ICP選択抽出法との相関は、農業運営の質を高めます。農業運営は、用水路、土壌への農薬や肥料を使用し、健康的で利益率の高い農作物の生産を目的とします。
蛍光X線分析計の仕様
ハンドヘルド(携帯型)蛍光X線分析計は、4W X線管、シリコンドリフト検出器(SDD)を備え、汚染(重)金属と養分(軽元素)の両方の検出・定量化に最適です。この分析計は、3種類の X線ビーム(3種類の電圧/フィルタ)によるSoilモード、2種類の X線ビームによるGeoChemモードを搭載すると、コンプトン散乱ノーマリゼーション法とファンダメンタルパラメータ法による分析アルゴリズムで予めキャリブレーションを行え、最大のアドバンテージが得られます。野外での電源はリチウムイオン電池(充電可)から供給され、小型のオンボードコンピュータが分析計の制御とデータ保存を実行します。
|
|
目的とする元素 |
DELTA Premium
3 X線ビームの土壌用 Ta/Au X線管、SDD |
P | 500 ~ 700 |
S | 100 ~ 250 |
Cl | 60 ~ 100 |
K | 30 ~ 50 |
Ca | 20 ~ 30 |
Ti | 7 ~ 15 |
Cr | 5 ~ 10 |
V | 7 ~ 15 |
Mn | 3 ~ 5 |
Fe | 5 |
Co | 10 ~ 20 |
Ni | 10 ~ 20 |
Cu | 5 ~ 7 |
Zn | 3 ~ 5 |
Ga | 3 ~ 5 |
As | 1 ~ 3 |
Se | 1 ~ 3 |
Br | 1 ~ 3 |
Rb | 1 |
Sr | 1 |
Zr | 1 |
Mo | 1 |
Ag | 6 ~ 8 |
Cd | 6 ~ 8 |
Sn | 11 ~ 15 |
Sb | 12 ~ 15 |
Ba | 10 ~ 20 |
Hg | 2 ~ 4 |
Tl | 2 ~ 4 |
Pb | 2 ~ 4 |
検出限界は下記の条件で測定しています。
測定時間:各ビーム120秒、測定試料:SiO2(均質、干渉成分元素なし) 測定環境:大気中 |
DELTA Premium PCソフトウェア: |
DELTA Premium PCソフトウェア: |
中国、南京の都市近郊の農場でのデータ収集
参考資料:
1: US EPA Method 6200:野外携帯型蛍光X線分析計による土壌と堆積物に含まれる成分元素濃度の測定。詳細は、次のWebをご参照ください:http://www.epa.gov/wastes/hazard/testmethods/sw846/pdfs/6200.pdf
2: Dr. David Weindorf(オリンパス 第2回主要調査研究助成賞 受賞者)と同僚達は、米国、ロサンゼルス、バトンルージュのLSU Ag Centerおよび中国、南京のChinese Academy of Sciencesの研究者です。都市近郊の研究詳細(オリンパスOmega Xpressハンドヘルド蛍光X線分析計を使用)については、次のWebのLSUのDr. Weindorfの公表文献をご参照ください:http://www.lsuagcenter.com/en/communications/authors/DWeindorf.htm