歯科用ハンドピースと先端ドリル部に使用されるミニチュアベアリング
アプリケーション_歯科ハンドピース用ミニチュアベアリングの表面粗さ測定
歯の治療において、歯を切削する器具を歯科ハンドピースと言います。ハンドピースには主に以下の性能が求められます。
- 硬い歯をスムーズに削れるように、ドリルが高速で回転すること。回転数は毎分40万~50万回と言われています。(高速回転)
- 口内の安全性を保つために振動は最小限にすること(低振動性の確保)
- 切削後必ず行われる滅菌処理に耐えられること(耐薬品性、耐高温性の確保)
- 患者に耳障りにならないように静かに回転すること(静粛性の確保)
これらの要求性能のなかで、①の高速回転はハンドピースにエアタービンを組み入れることで実現しました。
エアタービンは圧縮されたエアーによって高速回転し、圧縮エアーは潤滑な回転と、ユニットの冷却のために一般にオイルミストを含んでいます。また、エアタービンはベアリングによって保持されているため、使用されるベアリングは上記すべての要求項目を実現できる仕様でなければなりません。材料としては、摩耗しにくく、滅菌のための薬品や、高温環境に耐性のあるものが必要になります。また、形状としては、高速回転しても薬品や熱で滅菌を繰り返されても、低振動であり騒音を出しにくい形状を長く維持できることが要求されます。
要求性能が確保できているかを形状面から検証する手法の1つが、ベアリング構成部品の表面粗さ測定による評価です。高速回転による摩耗が設計基準値以内かどうか、洗浄後に滑り性が損なわれていないかどうか、振動なく静かに回転できるかどうか、これらの品質は構成部品の表面粗さを測定することにより定量的に評価することが可能となります。
しかし、ハンドピースに使用されるベアリングは非常に小型です。数多く採用されているベアリングの寸法は、内径3.175mm、外径6.35mmのものです。ベアリングを構成している部品のうち、特に表面粗さ測定が必要と考えられるベアリングボール、内輪、外輪も当然小型となり、ベアリングボールの直径は約1mmです。
これらの部品はもともと丸みのある形状をしていますが、サイズが小型になると、測定する対象の面の傾斜が非常に急峻になります。そのため、プローブで表面をトレースして粗さを測定する従来からの接触式粗さ計では、正確な測定をすることは非常に困難です。また、非接触計測タイプのレーザー顕微鏡でも、レンズの性能や反射光の検出感度によっては測定が困難な機種もあります。
3Dレーザー顕微鏡LEXT OLS5000で解決できること
① 4Kスキャンテクノロジー
X方向に従来比4倍の4,096画素でスキャンする4Kスキャンテクノロジーを搭載しました。これにより、画像補正なしにほぼ垂直の斜面でも粗さを高精度に測定できるようになりました。
87.5°の斜面形状も検出できます
② HDRスキャン
サンプル形状に応じて検出感度を変えて取得した2組の形状データから自動判断し正確なデータを構築します。
従来品 | OLS5000 |
③ 正確さと繰り返し性をダブル保証します
「正確性」は真の値にどれだけ近いかを意味し、「繰り返し性」は複数回の測定でいかに変動が少ないかを表すものです。オリンパスはトレーサビリティー体系図に基づいて正確性と繰り返し性を保証しています。
測定画面
① ベアリングボール
ベアリングボール外観
ベアリングボールのカラー画像(倍率2337X)
表面の滑らかな状態が画像で表現されています。
ベアリングボールの表面粗さ測定画面
小さな径のボールでもノイズのないデータが取得できていることがクリアな測定画像からもわかります。
② 外輪(カットサンプル)
外輪外観
軌道を測定できるように外輪を中心でカットしています。
外輪の軌道面のカラー画像(倍率4674X)
組上がったベアリングを分解したので、新品であっても、軌道をボールが通った痕跡がすでに出ていることがわかります。
外輪軌道部の表面粗さ測定画面
右上の画像の四角でマークしたエリアを測定しています。
③ 内輪
内輪外観
外側に軌道部がくぼんでいるのがわかります。
内輪軌道部のカラー画像(倍率4674X)
外輪よりもさらに傾斜が急になりますが、クリアな画像が取得されています。
内輪軌道部の表面粗さ測定画面
急斜面の場所の測定でも、傾きを補正する機能があるので平坦な場所と変わらない正確な測定結果が得られます。