医療用注射針
アプリケーション:医療用注射針の表面粗さ測定
医療用の注射器は薬液注入、血液や体液の採取・輸血をする際に人体に穿刺しますが、人体に直接針を刺すため、注射針の材質、形状、強度に対して国際規格やそれをもとにした国別の規格が設定されています。
形状は長さと外径、針先角度の寸法等に関して規格値があります。また、針の表面状態に関しては、注射の途中で針が抜けないように外径別に引き抜きの最低荷重が規定されています。
一方、挿入時の患者の痛みを最小限にするために、可能な限り滑らかな表面状態にすることも求められています。注射中の抜けにくさと挿入のしやすさという一見相反する要求を満足させるために、多くの注射針メーカーは注射針の表面粗さに最も適当と考えられる独自の規格を設定して管理を行っています。 従来、表面粗さの測定は接触式粗さ計を使用して測定していました。しかし、注射針の表面粗さを接触式粗さ計で計測するには以下のような大きく2つの課題がありました。
課題1
外径が1mmにも満たないタイプもある細菅形状の注射針は測定するエリアが非常に微小です。そのため、接触式粗さ計の計測プローブが測定予定位置を外れてしまう場合が多く見られました。
課題2
接触するプローブ先端の径の大きさは最小2umです。従って、原理的にそれより小さい粗さは測定できません。
3D測定レーザー顕微鏡LEXTで解決できること
1 高精細拡大観察による位置決めで、簡単に微小エリアを測定
最大17,280倍の鮮明な拡大画像により、細径の注射針であっても全く問題なく正しい位置を測定することが可能です。
2 微細な粗さを高精度に測定
オリンパスのLEXTは、測定に波長405nm/直径0.4umのレーザー光を使用しています。このレーザー光によって注射針表面の微細な粗さを非接触で捉えることができます。
また、接触式粗さ測定器は計測プローブで測定面をトレースした1ラインだけの情報しか取得できません。
しかしながら、LEXTはレーザー光をスキャニングして面としてのデータを得ることができるため、1ラインだけの情報に比べて圧倒的に多くのデータを得ることができます。
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オリンパスLEXTは、直進性の高いレーザー光を小さい半径でサンプルに照射し、スキャニングによる面データを取得することによって、微細な粗さであっても正確にデータを取得することが可能です。
3 貼り合わせモードによる長い距離の粗さデータも取得可能
レーザー顕微鏡による粗さ測定は、一般的に1視野数十umから数百umの範囲です。しかし、注射針のような細菅形状のサンプルの場合、測定長さがmmレベルになることもあります。そのような場合、LEXTはデータ貼り合わせ機能を使用し、粗さデータを平面方向に複数貼り合せることにより長い範囲の粗さを測定することが可能です。
LEXTによる医療用注射針粗さ測定事例
注射針のタイプ:G21(外径0.8mm)
1 視野のデータ(測定範囲 256um × 256um)倍率1,080倍
レーザー顕微鏡画像
粗さ測定画面:黄色い点線の範囲の粗さを測定しました。粗さの数値データだけでなく画像も添付されることで、注射針の表面状態の質感まで認識することができます。
2 視野のデータ(測定範囲 256um × 1640um)倍率1,080倍
レーザー顕微鏡画像:7視野の画像を貼り合せていますが、継ぎ目は全くありません
粗さ測定画面:赤い点線の範囲の粗さを測定しました。貼り合せたデータについても「正確さ」と「繰り返し性」をダブルで保証しています。