用途:油井ダウンホール削岩ツールの回転式ショルダー接合部(RSC)に発生する亀裂を、超音波検査で検出。
背景:油井およびガス井の垂直深さの範囲は3,500~30,000フィート(1,050~9,000メートル)です。油井掘削機器は高温や地層中に閉じ込められた損傷性ガスにさらされると同時に、引っ張り、腐食、および繰り返し荷重にさらされます。荷重や環境の影響によるダウンホール削岩ツール(以下、ドリルステム)の破損のメカニズムが一般的です。通常、ドリルステムの部品が破損すると、ボーリング機械にかかる1日あたりのコストは莫大となり、ドリルステム部品の喪失と油井廃棄の可能性さえ生じます。
ドリルステム部品は両端を突合せて接合することで、連続したストリングを形成します。この接合部が「回転式ショルダー接合部(RSC)」です。通常、ドリルステム接合部の破損は、繰り返し荷重の結果、疲労亀裂が進行して起こり、油井内でドリルストリングが完全に分解することに至ります。
ドリルビット近くのドリルストリング領域は「ボトムホール・アセンブリー(BHA)」として知られています。接合部破損が最も頻発する領域です。
装置:超音波探傷器EPOCHシリーズ(EPOCH 1000、EPOCH 600、EPOCH650、EPOCH LTC)
V109-RM直接接触型探触子(5MHz、直径0.5インチ)
手順:直接接触型探触子を用いた垂直ビーム試験を行います。縦波エコーはピンおよびボックス接合部の先端部から入射し、オペレーターが亀裂エコーを探します。
ピンおよびボックス接合部は、テーパー設計で製作されます。一般的なテーパーは1フィートあたり2~3インチです。RSCに対して超音波検査を行う際は、下図のように指向角を持つ超音波ビームの拡がりを利用して、ねじ山の根元から成長する亀裂を検出します。
良質な検査には、綺麗で滑らかな表面状態が不可欠であることから、ピンおよびボックス端部の表面仕上げが必要です。この試験の校正はIIW1型試験片で行えます。縦波を使ったRSC検査のために距離校正はIIW1型試験片の4インチと8インチの寸法長さ部分を用いて実施します。感度校正は類似のタイプおよびサイズのRSCに切り込まれたEDM基準ノッチを使って実施します。ノッチはピンおよびボックスの接合部(RSC)の最も深いねじ底に付けなければなりません。
RSCの超音波検査は、亀裂に加え、水素損傷、異物、さらに作業上あるいは製造上の問題を含む、ねじ山範囲を超えた領域の異常を検出する可能性も有しています。その他の利点は以下の通りです。
• ボーリング機械のダウンタイムを低減する、より迅速な検査プロセス
• ピンおよびボックス接合部の内径側・外径側の検査
• ドリルカラー、安定器、サブを含む、多くのダウンホール・ツールの全長検査
湿式蛍光磁粉など他の検査プロセスは表面検査のみで、通常ねじ山部分のみ適用されます。湿式蛍光磁粉試験(WFMT)はRSCの標準検査です。WFMTは表面破損異常に対する感度が非常に高いです。WFMTと超音波探傷(UT)を組み合わせることで、より高レベルのRSCの試験を実現します。
関連試験:油井削岩分野には他にも数多くの超音波検査が有効なアプリケーションがあり、シャフト、保持ピン、リフト機の検査、腐食減肉厚さ測定、浸水試験、圧力容器および構造機械の溶接部IIWI検査などがあります。