オリンパスのVanta™ポータブル蛍光X線(pXRF)分析計は、レアアース元素(REE)を含む地質試料のリアルタイムデータを提供します。 17種あるREE元素は、グリーンエネルギー革命とほぼすべての産業の生産にとって重要であり、これらの金属の国内生産を増やす必要性が生じています。1 そのため、これらの材料をリアルタイムで識別することに市場価値があります。 Vanta pXRF分析計は、検出限界に優れ、測定可能なREEが多いことから、効果的な探鉱と現場でのREE判定が可能になります。
価値の高いREEを含む鉱床の探査は、採鉱・探鉱業界にとって魅力的です。これらの材料は、環境保全技術、家電製品、医療用イメージング機器、防衛兵器など、幅広い製品に使用されているからです。 近年の経済変動から、調達地域を広く見つけることや、国内REE鉱床を使用して鉱石処理を国内で行うことが促進されています。2
17種のREEは、一般にトリウム(Th)やウラニウム(U)とともに産出され、これに基づいて分類されています。 オリンパスpXRFソフトウェアには、似通った性質のREEであるランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)や、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、トリウム(Th)、ウラニウム(U)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)のデータが組み込まれています。
REEおよび関連する元素に対するpXRFの性能
下のグラフは、Ore Research and Exploration Assay Standards(OREAS)社提供のキットに含まれるさまざまな認証標準試料(CRM)に対する、Vanta pXRF分析計の革新的な性能を示しています。 CRMデータとVanta pXRF分析計で計算された濃度との素晴らしい正確性と精度から、REE含有鉱石および鉱床について、Vanta分析計が優れた高品質のデータを提供できることがわかります。
図1: OREAS社提供の各種キットを使用して標準値と比較した、レアアース元素および関連する元素に対するVanta pXRFの性能。
Vanta pXRF分析計は、フルオロ炭酸塩と第二リン酸塩を含むさまざまな鉱石試料に高い性能を示しました。 フルオロ炭酸塩は、一般にイットリウム、セリウム、ランタンが産出されるバストネス石に見られる一方、リン酸塩はモナズ石に多く存在します。モナズ石には、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、重いREEであるサマリウム、ガドリニウム、弱放射性のトリウムが含まれます。 各レベルのグラフにも示されているように、バストネス石とモナズ石のどちらに対しても、Vantaは正確かつ精密な性能を発揮しており、元素の傾斜とR2が1に近いのがわかります。
どちらのREE含有鉱物も、似た形態で世界各地に見つけることができます。 世界的に有名なバヤンオボー鉱区、マウンテンパス鉱山、レムヒパス、エルククリークなど、各地の鉱山・鉱床には、検査済みの標準材料と類似した地質や鉱化が見られます。3 例えば、カリフォルニア州のマウンテンパス鉱山には、いくつかのOREAS試料と似た年代の片麻岩(特殊タイプの変成岩)があります。
部分的に前処理された試料や未処理試料に対して、Vanta pXRFが高品質データを生成可能であることについても、多くのデータが公開されています。 データのいくつかは、以下の資料で閲覧可能です。
- 地質調査へのハンドヘルド蛍光X線分析計の応用:露出した岩体や土壌、堆積物の地質化学
- 鉱物探査・掘削用ハンドヘルド蛍光X線分析計:リバースサーキュレーション/回転式エアーブラストとダイヤモンドコア
- 金(Au)の鉱物探査と鉱体ベクトル化に役立つポータブル蛍光X線分析計とAuパスファインダー元素
REEの採掘と処理
多くの国では、過去数十年にわたり国内でのREE採掘を行っていない一方で、最近、価値の高い材料の採掘および処理を推し進める動きがあります。 例えば、カリフォルニア州東部のマウンテンパス鉱山、西テキサスのラウンドトップ鉱山、ネブラスカ州のエルククリーク鉱山、ユタ州のホワイトメサミル、ワイオミング州のベアロッジ鉱山など、高品質のREE鉱床が存在する多くの採鉱施設および処理工場があります。3 レアアースを含む鉱物は160種類もありますが、主として採掘されるのはバストネス石、ラテライト粘土、モナズ石、ロパライトの4つです。 リン灰石、ガドリナイト、ゼノタイムなどの鉱物が使用されることもあります。
レアアース元素は厳密に言えば「レア」ではありませんが、金(Au)などの鉱物のように大きい塊や鉱脈では通常見つかりません。 材料の特定と採鉱が困難になります。 また、レアアース鉱石の処理は独特で、化学技術を大いに要する作業であるため、金や非金属鉱物の処理よりはるかに複雑です。 REEを2桁のppmレベルまで検出可能なVanta pXRF分析計は、価値の高い元素をその場で高速判定するための理想的なツールです。 さらにVanta分析計は、レアアース酸化物の濃度を現場で計算できます(下図参照)。 図2:
図2: Vanta pXRF分析計は、一般的なREE含有鉱物の化合物濃度を計算します。
多金属鉱石の判定は困難になり、材料の処理に別の課題が付随することがあります。 天然鉱石(レアアース鉱石の結合が10%未満)からレアアースを取り出し、精製して使用可能な材料(レアアース鉱石が60%超)にする作業は、磁気的、静電的、または重量分析的なプロセスで行われます。 ここから、各種の非レアアース鉱石を酸や熱で分解し、レアアース鉱石の結合はそのままにして、別の化学処理によって金属状態で抽出できるようにします。 ポータブルXRFは、この精製プロセスの各段階で使用でき、レアアース鉱石や、処理中に取り除かれるレアアースの豊富な化合物(カルサイト、シリカ、マグネタイトなど)の定量化に役立ちます。 これらのプロセスは、第二次世界大戦後に米国原子力委員会によって開発されたものが多く、99.9%超の純度のREEを生成可能です。4、5
レアアース酸化物のパスファインダー元素としてのイットリウム
17種のREEすべての完全な分析は、不可能(pXRF使用の場合)または極めて時間がかかり、費用がかかる(ICP使用の場合)ため、合計レアアース濃度を現場においてリアルタイムで判定する方法を見つけることが得策です。 金を検出するパスファインダーとして、ヒ素、銅、鉛、亜鉛などさまざまな元素を使用可能です。レアアース酸化物(REO)を伴う類似目標を達成するためにイットリウム(Y)も使用できます。ターゲットとするREE鉱物の組成に、検出可能なレベルでYが含まれることが前提です。 CRMを使用すると、イットリウムの濃度を合計レアアース酸化物(TREO)濃度と比較できます。 Y濃度を水平軸、TREO濃度を垂直軸にとってプロットすると、Y濃度はTREO濃度を予測するための優れた判断材料になることが示されます。 同様の関係は、現在実行中のREEプロジェクトの類似する試料の検査でも見られます。例えば、ナミビア北部のLofdal Heavy Rare-Earths Projectでは、多くの重いレアアース類に豊富に含まれるゼノタイム(YPO4)が主要なレアアース鉱物となっています。 オリンパスVanta pXRF分析計の疑似元素機能を使用すると、TREO濃度を現場でいつでも表示できます。 すべての計算は、検査中に本体上で実行できます(図4を参照)。 pXRF分析によるREEのリサイクルレアアース元素は高価なため、触媒コンバーターなどの消費財やその他のテクノロジーから金属をリサイクルすることが、ますます重要になっています。6 しかし、近年の電子機器は高度に複雑化しているため、実行可能なコストでリサイクルするのは困難です。 例えば、最新の携帯電話には最大65種類もの元素が含まれていて、従来のリサイクル技術では対処しづらくなっています。 幸いにも、Vanta分析計はマグネシウム(Mg)からウラニウム(U)まで、レアアースを含む全元素をスキャンでき、電子機器、車、その他の消費者向けおよび工業用製品から、レアアースを簡単に判定してリサイクル可能です。 REEをリサイクルすることで、さまざまな別の用途、環境保全技術用の磁石、消費財に再利用できます。7 | 図3: 判定されたイットリウム濃度に基づいて、認証された合計レアアース酸化物を予測可能なVanta pXRF分析計の性能。 図4: Vanta pXRF分析計の疑似元素機能を使用すると、合計レアアース酸化物濃度をリアルタイムで計算できます。 |
参考文献
- Schulz, K.J., DeYoung, J.H., Seal, R.R. and Bradley, D.C. eds., 2018. Critical Mineral Resources of the United States: Economic and Environmental Geology and Prospects for Future Supply. Geological Survey.
- Long, K.R., Van Gosen, B.S., Foley, N.K. and Cordier, D., 2012. The principal rare earth elements deposits of the United States: A summary of domestic deposits and a global perspective. In Non-Renewable Resource Issues (pp. 131-155). Springer, Dordrecht.
- Van Gosen, B.S., Verplanck, P.L. and Emsbo, P., 2019. Rare earth element mineral deposits in the United States (No. 1454). US Geological Survey.
- Frank H. Spedding, Harley A. Wilhelm, Wayne H. Keller, Donald H. Ahmann, Adrian H. Daane, Clifford C. Hach, and Robert P. Ericson. Industrial Engineering Chemistry 1952 44 (3), 553-556
- Spedding, F.H., 1949. Large-scale separation of rare-earth salts and the preparation of the pure metals. Discussions of the Faraday Society, 7, pp.214-231.
- Bleiwas, D.I., 2013. Potential for recovery of cerium contained in automotive catalytic converters.
- Goonan, T.G., 2011. Rare earth elements: End use and recyclability (p. 15). Reston: US Department of the Interior, US Geological Survey.