繊維切断箇所の観察画像(透過暗視野観察) |
化学繊維の種類と特長
化学繊維には合成繊維、再生繊維、半合成繊維があります。
今回の観察事例で紹介する合成繊維は、石油等を原料に化学合成させた物質を抽出して作られた繊維を指します。合成繊維はさらに分子構造によって分類がされ、縮合高分子であるナイロンやポリエステル、重合高分子であるアクリルやポリプロピレンなどの種類があります。
合成繊維の観察目的と課題
合成繊維の観察目的は主に以下の2つが挙げられます。
- 紡糸された繊維にほつれ等がないかを確認する
- 織布工程を経て生成されたナイロン生地などのほつれなどの破損や色ムラ等の有無を確認する
しかしながら、化学系の合成繊維は天然繊維と比べ、表面部分の光沢によるハレーション(白トビ)※が発生するため顕微鏡やデジタルマイクロスコープによる観察は不向きとされてきました。
そのため、一般的には電子顕微鏡を用いて観察していますが、低倍観察の簡易的な確認であっても、観察する度に真空引きの前準備が必要であったり、サンプルサイズが限定されるなどの課題がありました。
また、観察ができても電子顕微鏡で得られる画像はモノクロである為、サンプルの色味などが確認できないことも解析業務の大きな障壁となっていました。
※(ハレーションとは)
顕微鏡観察の際に、サンプルの表面の光が強く当たった箇所が白くぼやけてしまうような"白とび"が 発生することをハレーションと言います。
ハレーションは顕微鏡だけの現象ではなく、デジタルカメラやスマートフォンのカメラなどでも起こる現象ですが、特に顕微鏡観察の場合は、ハレーションが発生するとサンプル表面の観察や検査の際に鮮明な画像が取得できず悪影響を及ぼします。
(サンプル表面のハレーション(白トビ)により観察が出来ない例)
(左) 合成繊維表面 (右) ナイロン生地表面
エビデントのソリューション
デジタルマイクロスコープ DSX1000による 透過偏光観察および拡散照明
DSX1000の多彩な観察方法により従来の課題を解消できます
① 透過暗視野観察によるソリューション
デジタルマイクロスコープDSX1000の透過暗視野観察ユニットを用いることで、分散して照明を当てることが可能です。これによりハレーションの原因とされる強い反射成分が低減され、繊維の一本一本が鮮明に観察可能となります。
② 拡散照明によるソリューション
落射観察におけるハレーションの多くは局所的に生じる強い反射光が原因でした。
また、反射率が異なる繊維が混在し、且つ、編み込みによって凹凸のあるナイロン生地では特にこの問題が起きやすく、一般的な照明の調整では観察が困難でした。
拡散照明を用いることでサンプルに対して均一な光を当てることができるため、繊維の状態の確認はもちろん、電子顕微鏡の観察では得られなかった色味の評価も可能になります。
観察ソリューションで使用するユニット
① 透過観察用ユニット※
デジタルマイクロスコープDSX1000専用の透過照明ユニットを用いることで、一般的な照明の他、拡散照明 / 偏光観察 / 暗視野観察などが可能です。
実体顕微鏡で用いられる照明カードリッジをスライド機構に取り付けるだけでサンプルにあった観察方法を選択することができます。
透過照明ユニット外観 | スライド式の照明カードリッジ取付け部分 |
※ 透過観察用ユニットは、カスタマイズ製品となります。
② 拡散照明アダプタ
デジタルマイクロスコープ DSX1000専用の拡散照明アダプタはレンズの先端に取り付けるだけでハレーションを抑えることが可能です。
拡散照明アダプタの取付け |