このアプリケーションノートでは、自動車エンジンやその他の内部燃焼エンジンの鋳造エンジンブロックやシリンダーボアの肉厚を測定する方法について説明します。 超音波厚さ計の詳細と、エンジンブロックやシリンダーボアの肉厚の測定方法について見ていきましょう。
自動車やトラックのエンジンブロックは、製造過程で非常に多くの管理を必要とする複雑なアルミニウムまたは鉄の鋳造品です。 複雑な部品の肉厚の大半は、内面にアクセスできないことから、機械的に測定できません。 超音波測定によって、寸法のほとんどを非破壊で測定可能となります。
特にレーシングカーやカスタム製造車に使用される高性能エンジンの場合、重視されるのはシリンダーボアの肉厚です。 シリンダーの初期の機械加工や内径を広げる作業を行う際は、肉厚が規定最小値を下回らないことが重要です。 超音波測定は、この厚さ管理をするための実用的な非破壊検査技術です。
シリンダーボアの厚さを測定する超音波厚さ計
エンジンブロックとシリンダーボアの測定には、38DL PLUS™厚さ計、45MG厚さ計(Single Elementソフトウェア付き)、72DL PLUS™厚さ計などの精密厚さ計を使用できます。 探触子は、具体的な測定内容に応じて選択します。 エンジンブロックに標準的に用いられる厚さの鋳造アルミおよび鋳鉄は、M109(5 MHz、0.5インチ径)やM106(2.25 MHz、0.5インチ径)などの一般的な接触型探触子で測定できます。 一方で、複雑な形状やアクセスが制限されるエンジンブロックには、他の探触子が必要とされることも多くあります。
シリンダーボアの測定の場合は、M206(5 MHz)やM207(2.25 MHz)などの半径に合わせた遅延材付き探触子が使用されます。 交換可能なプラスチック製遅延材をシリンダーボア内の曲率半径に合わせてカッティングし、適切な音響結合を取得します。 排気口の肉厚など、アクセスが限られる部位の測定には、密閉空間に探触子が届くようにペンシルタイプの探触子を使用する必要があります。 特定の用途に推奨される探触子についてはお問い合わせください。
シリンダーボア肉厚の超音波測定手順
一般的に、適切に設定した測定機器によるシリンダーボアなどエンジンブロック肉厚の超音波測定は単純です。 校正精度は、一般的に±0.12 mm(±0.005インチ)以上です。 このタイプは、他の用途と同様、以下のいくつかの基本原理が適用されます。
- 有効で正確な読み取り値を得るために、測定点の内外表面はほぼ同心または平行であること。 表面は清潔で異物がないこと。
- 探触子は外側表面に垂直に確実に接触させること。 シリンダーボアの測定の場合は、適切な半径に合わせた遅延材を正しい向きに持って使用するケースも含まれます。 排気口などアクセスが限られる部位の測定では、最適な位置調整を行うために波形のモニタリングが必要になる場合があります。
- 約1.25 mm(0.050インチ)未満の厚さ測定には、薄い材料測定を適切にセットアップするとともに、高周波数の探触子(一般的には10 MHzのM202)が必要になります。
注:超音波厚さ測定は、他のさまざまな自動車部品測定に適用可能で、車体鉄板(曲げ部分の減肉率など)、ロールバー、成形プラスチック部品、エアバッグのティアの継ぎ目、プラスチック製部品の塗装の厚さ測定などがあります。 これらのアプリケーションの詳細は、お問い合わせください。