概要
米国では、これまで何年もの間、犯罪現場の証拠を裏付けて犯罪者の訴追を支えるための分析法として 蛍光X線(XRF)や X線回折(XRD)が、他の分析手法と共に用いられてきました。この種の証拠を収集するためには、定性分析と定量分析の両方が同じように重要です。これまで、犯罪現場に関わる科学的解析の大部分はラボでの作業に依存してきました。そのため、証拠物件をラボまで輸送して解析する必要があり、その際、常に分析過程の管理基準に従わなければなりませんでした。
犯罪の現場検証ではポータブル蛍光X線分析装置とX線回折装置が極めて重要な役割を担います。ポータブル蛍光X線分析装置は次のような証拠の鑑識に役立ちます: 隠匿メタンフェタミン錠剤、偽造サプリメントやタバコ、銃弾、ケーシング、発砲時の残留物や破片、焼却された人骨や歯の破片、および遺体付着土。また、ポータブルX線回折装置は次のような証拠の鑑識に役立ちます:偽造薬物、爆発物、融着物や反応促進剤、その他の有害物質。
米国では今日、犯罪現場の捜査員はオリンパスの蛍光X線分析装置とX線回折装置を使用して証拠物件の輸送に伴う改変や損傷を伴うことなく、現場で証拠を分析することが可能になりました。これらの捜査ツールは性能ばかりでなく、犯罪現場での捜査に必要となる可搬性や柔軟性も備えているので、法廷での立証に非常に役立ちます。
現場に残された証拠: リンとヨウ素の同定(「キッチンでの殺傷」の立証)
キッチンにおいて殺傷が行われた場合、殺傷過程で使用される2種類の物質(赤リンとヨウ素)がその証拠になります。この2種類の物質はメタンフェタミン製造に不可欠な要素であり、多くの場合、コーヒーフィルターの残留物、または、開封した容器や「調理」時に蒸発して壁面へ付着した痕跡から検出されます。これらの痕跡は目でも見えるので、捜査員や鑑識官は証拠として立証することができます。しかし、最終的な立証のためには科学的なデータが必要です。ハンドヘルド蛍光X線分析計DELTAとポータブル蛍光X線分析装置X-5000は、リンならば500ppm、ヨウ素ならば20ppmという極めて低い濃度を同定できる能力を備えています。メタンフェタミン製造で実際に使用される濃度範囲は優にこの値を超えています。
動かぬ証拠? Pb、Cu、Sb、Baなどを現場で同定
11世紀にセビリアで火薬が使用された、というのがヨーロッパに残されている最初の記録です。1300年代までには、ヨーロッパ中で大砲と拳銃が知られるようになっていました。
時代とともに銃や火薬、弾丸、ケーシングの製造技術が向上し、人口が増加して銃が入手しやすくなるにつれて銃の使用範囲が拡大していきました。
銃発射の現場へ招集された捜査員は、ありとあらゆる技術と手段を用いて弾丸の経路を追跡し、発射位置を特定しようとします。
弾丸に含まれる鉛、銅/亜鉛ジャケット合金やその他の金属、硝煙反応などを同定して比較するためには元素分析が必要となります。鉛に含まれる管理/非管理微量元素を分析することによって、弾丸がどのメーカー製であるかを追跡することができます。弾丸ジャケットの製造に使用される銅/亜鉛合金は数種類に限られますが、それでも、詳しく分析することによってメーカーを見分けることは可能です。さらに、メーカーが最終製品に付け加える金属部品(銅線、鋼、アルミニウムなど)の合金を分類すれば、弾丸がどこで作られたかを決定する助けとなります。
銃器が発射されると様々な物質が気散し、飛び散ります(硝煙反応)。大部分のカートリッジ点火薬の場合、主要成分としてバリウム、アンチモン、鉛を含みます。硝煙反応は銃器が発射された周囲のいたる所(人体、衣服、壁面、床面、ガラス、カーペットなど)から検出されるので、弾丸経路の決定に役立ちます。
ハンドヘルド蛍光X線分析計DELTAまたはポータブル蛍光X線分析装置X-5000を使用すれば、鉛や銅、バリウム、アンチモンなどの元素を簡単に分析することが可能であり、これらの元素の検出下限は低ppmレベルに達します。
人骨と歯の破片からの同定
法医学の分野では、人骨や歯の破片のストロンチウム(Sr)構成比 – 人がどこで生まれて、最後はどこに居たかを示す指標 -
を決定するために ポータブル蛍光X線分析装置 が使用されています。遺体が焼かれていたとしても、歯科用充填材が残っていれば、それをポータブル蛍光X線分析装置で分析することにより、被害者を特定する助けとなります。また同様に、骨格中に金属部材が埋め込まれていれば、それを ポータブル蛍光X線分析装置 で分析して同定できる可能性があります。
爆発物、融着部材、促進剤の同定
ポータブルX線回折装置TERRA
を使用すれば、危険有害物質を現場で素早く判別することができます。危険性物質(HAZMAT)の疑いのある物品の識別と定量測定にポータブルX線回折装置TERRAが使用されており、例えばアジ化物のPETN、黒色火薬成分(KClO3、KClO4、KNO3)、閃光粉(KClO3)、cascandite
などを検出することができます。
偽造薬のスクリーニング
薬品が実際に活性成分を含んでいるか、不活性成分や異物(代用)成分を含んでいないか、また、その量はどの程度か、などの問題をX線回折装置を使用してテストすることができます。 ポータブルX線回折装置TERRA を使用すれば、あたかも指紋照合のように薬剤の調合法や前駆体を知ることができ、しかも非破壊的に素早く分析を行えます。X線回折装置によるスクリーニングは、患者の安全性を確保するばかりでなく、製薬会社の法的権利とブランドの保護という観点からも有用です。