はじめに
鋼製コイルから形成される電気抵抗溶接(ERW)パイプは、コイルの展開、チューブミルへの鋼板の供給の後、電気抵抗溶接を使用してコイル端を縦方向に結合するという連続した工程を経ます。 鋼板端がずれていると、成形工程全体で溶接にばらつきが出る可能性があります。
課題
電気抵抗溶接パイプの製造時に溶接部検査を実施するには、溶接部を目視で辿って探傷プローブが溶接部の中心に沿うようにする必要があります。 この手動のトラッキング方法で問題なのは、オペレーターのスキル頼みであるということと、検査が正しく行われるために高い集中力を要する点です。
対処方法
製造時には、溶接工程で発生する余盛を取り除くためにスカーフィングツールを使用します。 この作業では、溶接部の両側の肉厚(WT)が変化します。 プロファイルにおけるこの変化は、フェーズドアレイベースの溶接プロファイリングと、オリンパスのERWインラインまたはオフライン検査システムのトラッキング機能を使用してモニターできます。 ERWパイプ探傷システムのこの機能に必要なプローブは、溶接部の両側にある熱影響部(HAZ)の先まで十分に伸びる湾曲したフェーズドアレイ(PA)プローブです。 このプローブは0度で縦波を発信して測定対象エリアをスキャンし、溶接部の側面図を示します。 | アンダーカット溶接部を持つERWパイプ例 |
伝播時間分析をベースとしたアルゴリズムでは、スカーフィング工程で発生した肉厚の変化を用いて溶接部の位置を推定します。
結果
下の図は、オリンパスのERWインラインおよびオフラインシステムによって表示される溶接部トラッキングデータの例を示しています。 上の4つのグラフは溶接部検査情報を示しています。また、下の2つのグラフは、溶接部をトラッキングするために使用される溶接部検出位置と肉厚のC-スキャンデータを示しています。 | 欠陥チャンネル(上部)と溶接部トラッキング表示(下部) |
この検出された溶接部位置情報はリアルタイムでPLCに送信されて、サーボモーター式の装置を使用して各プローブが再配置されるため、溶接部と熱影響部はパイプの全長に沿って正しく検査されます。 | 自動溶接部トラッキング機能用の円形軸が見られるERWインラインシステム |
下の図で、フェーズドアレイプローブは溶接部の中心上に配置され、肉厚測定結果が記録されています。 次にパイプは自ら位置をずれて自動溶接部トラッキング機能をテストします。 スキャンが示すように、フェーズドアレイプローブは自動的に溶接部の中心上に再配置されます。
自動溶接部トラッキング
結論 / 主な利点
結果が示すように、ERWインラインまたはオフラインシステムでは、フェーズドアレイテクノロジーを使用することで、溶接部を自動的にトラッキングできるので、オペレーターの目によるトラッキングに頼らずにすみます。 外乱要素をなくすことにより、溶接部の検査を100%信頼できるようになります。 欠陥情報と溶接部トラッキングデータの両方が記録されるため、パイプデータファイル内のトレーサビリティーが実現します。
さらに、リアルタイムデータによって溶接プロファイルとスカーフィングエリアを視覚化して、溶接とスカーフィングプロセスの即時フィードバックを得ることができます。 パイプを切断する前に分析を実行できるので、スカーフィングツールが摩耗または損傷している場合に影響を受ける材料は最小限になります。