工業用ビデオスコープは、基本的なイメージングをはるかに超えた機能を備えています。 先端機能を備えたハイエンドの工業用ビデオスコープは、航空機用ガスタービン検査の精度と信頼性を保証します。
ここでは、航空機検査員の測定結果の信頼性を高める2つの最新工業用ビデオスコープ機能について説明します。
1. ステレオ計測
航空機検査用の正確な画像データを提供する高度な工業用ビデオスコープ機能の最初は、ステレオ計測です。
適切な光学系と組み合わせることで、ステレオ計測により、スコープの先端と対象物の角度や欠陥のタイプに関係なく、3D空間における欠陥を定量化できます。 また、工業用ビデオスコープIPLEX™ NXでのステレオ計測は、従来モデルの4倍の広い視野と、より深い被写界深度を提供します。
これらの機能は、検査員にどのように役立つでしょうか。 ステレオ計測は、主に3つの点で役立ちます。
より高い検出能力を実現:より広い視野と深い被写界深度で、従来のスコープに比べて遠くからでも欠陥を確認し測定できるため、検出能力が向上します。 見えないものを測定することはできません。
正確な測定:最新の工業用ビデオスコープも、スマート技術の採用によりステレオ計測の精度が向上しています。 たとえば、オリンパスの工業用ビデオスコープIPLEX NXは、スコープ本体とステレオチップアダプターの間で1対1のマッチングを行うため、測定アルゴリズムによって、スコープの先端と対象物の距離の増加に伴う誤差範囲を低減できます。 最適化された光学系とイメージセンサーにより、再現性のある測定結果を得るための最適な測定ポイントを選択できます。
検査の迅速化:より迅速に検査するためには、1回の検査で最も信頼性の高い測定結果を得る必要があります。 ステレオ計測の結果の品質は、スコープの先端から対象物までの最適距離に依存します。IPLEX NXなど最新の工業用ビデオスコープでは、検査員が測定を開始する前でも、3D空間でスコープの先端と対象物の距離をリアルタイムに測定できます。 マルチスポットレンジングと呼ばれるオリンパスのIPLEX NX機能は、より迅速で信頼性の高い測定を実現します。
工業用ビデオスコープIPLEX NXの拡張された測定機能(a)は、遠方からの詳細な測定を可能にします(b)。
Multi Spot-Ranging |
2. 3Dモデリング
高度なステレオ計測機能を使用した場合でも、精密かつ正確に測定できるかどうかは基準点と測定点をどの程度正確に設定するかによります。 これらのパラメータ設定は、複雑なシーン、困難な照明条件、不規則な表面を持つ部品の測定など、特定の状況では困難な課題となる場合があります。
最新の工業用ビデオスコープはどのようにポイント選択の精度を高めているのでしょうか。 3Dモデリングです。
たとえば、オリンパスの工業用ビデオスコープIPLEX NXの3Dモデリング機能で、重要なコンポーネントの正確な形状をより簡単に視覚化できます。 この機能により、標準の2Dステレオ画像に加えて、さまざまな3Dビューで対象物についてのさらに詳しい情報を得ることができます。 3Dモデリングの他の利点は次のとおりです。
高性能レンダリング:たとえば、基準面のレンダリングにより、距離値と色分けされた3Dモデルを使用して、凹凸をすばやく判断できます。
リアルタイム2次元/3次元可視化機能:標準の2Dステレオビューと3Dモデリングビューで、ピクセル選択がリアルタイムで更新されます。 この機能は、選択したピクセルが3D空間のどこにあるべきかを検査員が視覚的に確認するのに役立ち、測定点の誤配置のリスクと再測定の必要性を減らします。
3Dモデルの仮想スライス:この機能を使用すると、3Dモデルから不要なセクションを簡単に削除して、重要な領域に焦点を合わせることができます。
ステレオ計測と3Dモデリングについてご覧いただきました。次に、これらの高度な工業用内視鏡検査機能が実際に検査員にどのように役立つかを説明します。 航空機のケーススタディの詳細について続きをお読みください。
ケーススタディ:最新の工業用ビデオスコープを使用した先端隙間の測定
先端隙間の測定は困難な課題ですが、重要な航空機検査業務です。 測定基準点は正しく設定する必要があり、その結果によっては、エンジンの効率や安全性にさえ影響を与える決定的な結末となることがあります。
ご参考までに、先端隙間の測定では、ブレードチップ(高圧コンプレッサーステージなど)とエンジンシュラウド間の距離を測定します。
ガスタービンでは、ブレードチップとシュラウドの隙間は、エンジン性能に最も重要です。 適切な隙間がないと、ブレードが損傷する可能性があります。 隙間が大きすぎると、圧力が低下し、エンジン効率が低下します。
これらの理由により、エンジンの耐用年数を通じて、先端隙間が仕様の範囲内であることが不可欠です。
従来の工業用ビデオスコープを使用した先端隙間の測定における課題
従来の工業用ビデオスコープを使用した先端隙間の測定では用心すべき場合があります。
理由は次のとおりです。検査範囲を拡大することで、ビデオスコープとレンズ被写界深度内の物体との距離が増加します。 しかし、従来のスコープの場合、スコープと検査対象の間の最大距離は約20 mm(0.8インチ)です。 この距離を超えると、精度が大幅に低下します。 測定できない場合もあります。
では、どのように精密・正確な測定を行うのでしょうか。
工業用ビデオスコープを使用して重要な部分を測定する際に考慮すべき要素が2つあります。対象物のサイズおよびビデオスコープと対象物の距離です。 これらの重要な要素は測定の精度に影響を与える可能性があるため、検査前にスコープの先端が対象物からどれだけ離れているかを測定する必要があります。
最新の工業用ビデオスコープを使用して先端隙間を測定する利点
上記の問題に対処するため、最新の工業用ビデオスコープでは、検査前にライブ画像上でスコープの先端から対象物までの距離(Z距離)を測定できます。
ステレオ画像内で全ピクセルのZ距離を測定することにより、ビデオスコープは、距離のサンプルをリアルタイムで表示しながら、ステレオ画像の任意領域で最大5つのZ値を個別に強調表示できます。 表面特性と重要な詳細情報を取得し、信頼性の高い測定を行うことができます。
ビデオスコープと先端隙間のなす角度によっては、先端隙間境界部の誤認識につながることがあるので、この機能は測定誤差の低減に非常に役立ちます。 先端隙間の測定は、基準面からの対象物の深度または高さの測定として解釈されます。 測定を行うには、既知の表面を基準面に設定し、基準面に垂直な測定を行う必要があります。
ブレード先端とエンジンシュラウドの隙間の2Dステレオ画像と3Dモデル
実際にどのように見えるかについては、上の画像で確認してください。 上の画像は、エンジンシュラウドに近いコンプレッサーブレードの2Dステレオ画像と3Dモデルを示しています。 この画像は、工業用ビデオスコープIPLEX NXを使用してキャプチャされたものです。IPLEX NXは、スコープの先端から対象物までの距離が最大60 mm(2.4インチ)まで正確に測定できます。
ここでは、シュラウドの平面が基準面となっています。 3Dモードに切り替えると、基準面の正確な方位を素早く確認できます。 見やすくするために、下図に示すように色分けできます。
表面上の点が、3点指定による三角形で設定された基準面の上または下に位置するかが、3Dモデルで色分け表示されます。 緑:基準面内 赤:基準面の下 青:基準面の上
基準面が正確に定義されれば、先端隙間は簡単に測定できます。 上図に示すように、選択したピクセルと、3点指定による三角形で設定された基準面の距離は1.48 mmです。
最新の工業用ビデオスコープが今後の航空安全性を向上
航空機検査は、安全で効率的な空の旅に欠かせません。 3Dモデリングによるステレオ計測などの正確なRVI測定機能により、現在および将来の航空機検査の信頼性が高められます。
関連コンテンツ
お問い合わせください