この記事は、2016年9月27日にAZO Materialsに寄稿されたものを基にしています。
ポータブル蛍光X線分析計(XRF)の合金用途専門家であるオリンパスのALex Thurstonが、産業環境におけるVanta™ハンドヘルド蛍光X線分析計およびその強力な機能について、AZoMのStuart Milne氏と話します。
SM:合金分析は、航空機検査やパイプライン分析から金属スクラップの品種判定や溶接まで、たくさんの産業において重要なプロセスです。Vanta分析計が、現在市販されている他のハンドヘルドXRFと異なる点は何ですか?
AT:オリンパスのVanta分析計には、合金の検査と分類に効果をもたらす数々の改良点があります。
まず、稼働時間の最大化、投資の早期回収、所有コストの低減を目的として、産業環境の厳しさに耐えられるように一から設計されています。これには、米国軍用規格(MIL-STD-810G)の落下試験と、防塵防水性能のIP55*評価が含まれます。
堅牢設計に加えて、新しいAxon Technology™は、ハンドヘルドXRFの分析性能を大きく飛躍させています。Axon Technologyは超低雑音電子機器を使用して、分析計の分解能を向上させ、判断が難しいエネルギー領域において正確な元素検出を実現します。また、ソフトウェアの進歩によって、カウント可能なX線スループットが増大し、ユーザーに対する表示精度が改善されています。最終的に、精度が向上すればユーザーは検査結果に大いに自信を持つことができます。
SM:稼働中に腐食の可能性を予測する上で、Vanta分析計が他の市販機器より優れている特長は何ですか?
AT:ハンドヘルドXRFを使用して行う稼働中の腐食モニタリングは、合金化された遷移金属とシリコン含有量という2つの重要な要素の計算に関係しています。Vanta分析計はこれらの重要な元素を正確に測定することに秀でており、特にクロム、ニッケル、銅などのスペクトル的に混み合った遷移金属領域の測定に優れています。シリコンなどの軽元素の検出では、信号数と分解能の増大による効果が大きく、これによって分離性能が向上し、軽元素スペクトルピークがより明確になります。
SM:Vanta分析計は、スペクトルが混み合っている鉄-ニッケル-コバルト(Fe-Ni-Co)やマグネシウム-アルミニウム-シリコン(Mg-Al-Si)領域の分析を容易にするためにどのように開発されたのでしょうか?
AT:合金判定においては、特にスペクトル処理について2つの独特な側面があります。1つは、複数のスペクトルが重なった(Fe-Ni-Co)、信号とバックグラウンドが非常に高い領域であるということ。もう1つはもともとカウントレートが低い領域であり、0.5%未満の組成レベルを分析計で正確に測定するのは困難であることです。
Vanta分析計は、ハードウェアおよびソフトウェアのスペクトル生成に関してノイズとバックグラウンドが極めて低いため、Fe-Ni-Co領域を簡単に測定できます。また、検出器の分解能が向上したことで、鉄(Fe)のピークからの干渉が低減したため、スペクトル処理でレポートされるコバルト(Co)の検出限界が以前よりもかなり低くなりました。Axon Technologyの進歩によって、以前は不可能だった元素のピークとバレーを定義できるようになりました。
Mg-Al-Si領域は、これらの元素から生成される代表的なX線量に関して改善され、使用可能なスペクトルの一部としてカウントできます。前世代までのハンドヘルドXRFでは、これらの元素が十分な信号を生成することはめったになく、ピークを明確に定義できませんでした。そのため、これらの元素が1000 ppm(0.1%)未満の場合には正確に測定するのが困難でした。カウントレートが劇的に改善されたVanta分析計では、これらの元素がこれまで必要としていたよりもはるかに短い時間で正確に測定できます。
SM:軽量元素の検出速度を上げるためにどのような開発をされましたか?またそれがソーティング作業の処理量増加にどのように寄与しましたか?
AT:お話したように、軽量元素領域のカウントレートは大幅に増加しています。分析計のカウントレートが改善されたおかげで、軽量元素の結果が表示されるまでの時間がとても速くなりました。以前のハンドヘルドXRFは、完全には正確でない場合がある軽元素の測定結果を画面に表示して、ユーザーをつなぎとめていました。その戦略はもう必要ありません。マグネシウムから硫黄までのZ番号が小さい元素の正確な測定結果を、わずか数秒で数値化できます。検査に必要な時間を短くするのは、ソーティング作業の処理量を増やすための最も簡単な方法です。Vanta分析計を使用すれば、その速さと正確さによって、重要な軽量元素検出を伴うソーティング作業を首尾よく自信を持って行うことができます。このように優れた軽元素分析機能はすべて、Z番号と融点が高い元素のロバスト解析特性と組み合わされています。これは、他のハンドヘルド合金判定システムでは正確な分析が困難な場合があります。
SM:Vanta分析計はQA/QC検査アクティビティにおいて精度の高い結果をどのように提供していますか?
AT:正確な結果に寄与するハードウェアおよびソフトウェアのすべての改善点に加えて、Vanta分析計には拡張されたグレードライブラリーがあり、すべてのベースメタルについてよく使用される合金をマッチングさせます。また、グレードライブラリーにさらに多くのグレードを含めるほか、詳細なグレードマッチメッセージ機能を表示して、グレードの重なりの考慮事項、鋳造の等価指定、さらには異なる合金の類似の化学組成をユーザーに知らせることができます。
グレードマッチングシステムにより利用できるグレードと仕様情報の組み合わせに正確な化学組成結果が合わさり、QA/QC検査システムの一部として使用する場合に、ユーザーが信頼できる測定結果が提供されます。
SM:Vanta分析計をラボベースのシステムと比較するとどうでしょう?
AT:すばらしいカウントレートを誇るVanta分析計は、多くのラボベースシステムに匹敵するものになっている一方で、X線管の使用電力は低く抑えられています。Vanta分析計が実現する低ノイズスペクトル生成によって、ユーザーは屋外でも極めて正確な検査を実行する柔軟性を持つことができます。
SM:この分析計の改善された筐体は、現場で作業するユーザーにどのような効果がありますか?
AT: Vanta分析計は、前述のハードウェアおよびソフトウェアの改善点をすべて保持しながらも、IP55*に準拠しています。簡単に言うと、この分析計は当初から過酷な環境下で日常的に使用できるように設計されました。水滴や水しぶきから浮遊粉塵まで、かつてはハンドヘルドXRFの動作を損ねると見なされてきた障害があっても、Vanta分析計は期待どおりに作動できます。その他の筐体設計は、個人用防護具(PPE)を身に着けたユーザーを想定したて作られました。例えば、タッチスクリーンユーザーインタフェース、感触のよいジョイスティック操作機能、工具不要のウィンドウ交換機能などです。
*MシリーズはIP54準拠。
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