部品の欠陥を検査する際、検査員は自分の判断に自信が持てなくなる瞬間があるものです。 診断を誤ると、膨大な時間とコストが余分にかかることになります。 また、欠陥を過大に評価してしまうと、無駄な掘削または修理に費用がかかります。 一方で、欠陥を過小評価すると、壊滅的な障害が発生する可能性があります。 そのため、常に正しい診断が求められます。
TFM処理エンベロープの限界への挑戦
超音波探傷器 OmniScan™ X3のシャープで高解像度の画像により、検査員は診断を確実にするために必要な画像データを得ることができます。 超音波探傷器 OmniScan X3のフルマトリックスキャプチャ(FMC)およびトータルフォーカシングメソッド(TFM)により、部品の欠陥を明確かつ正確に表示できます。 この超音波探傷器の強力なTFM処理は、「エンベロープ」と呼ばれる高度な機能によってさらに強化されます。
エンベロープがオンになると、OmniScan X3ソフトウェアのTFMアルゴリズムは、エンベロープ検出を実行する前に、信号の実際のコンポーネントと理論コンポーネントを抽出し、それらを統合します。 このプロセスは、データが失われないことを保証し、ノイズとアーチファクトを除去し、画像を微調整します。 欠陥に焦点を絞った解析画像で、欠陥の形状とサイズをより簡単に特徴づけることができます。
エンベロープ オフ - 再構成アーチファクトが欠陥信号上に表示されます。
エンベロープ オン - TFM画像再構成の結果はより高解像度で鮮明になり、振幅は増加し、データは失われません。
TFMエンベロープ画像が優れているのに、なぜエンベロープをオフにする場合があるのでしょうか。
エンベロープでOmniScan X3の画質が向上するにもかかわらず、検査員がエンベロープを使用しない場合があるのを疑問に思うかもしれません。 その根底には2つの問題があります。その1つは、もう一方の問題よりも簡単に解決できます。
第1の問題は、性能に関するものです。 エンベロープが提供する高画質を実現するために必要な処理能力は、超音波探傷器のパルス繰り返し周波数(PRF)または超音波信号の送受信速度の減衰に影響します。 超音波探傷器のスキャン速度が低下し、データ取得率が減少してしまいます。
しかし、回避策があります。 TFM格子解像度と1波長あたりの節点数の設定(縦波は「pts/λL」、横波は「pts/λT」)をわずかに調整するだけで、データ取得速度を上げることができるため、以前よりもさらに高速に処理できます。
データ取得周波数を下げることなく、エンベロープ画像の画質を維持する
エンベロープ処理は非常に強力であるため、格子解像度は通常のTFMにおけるほど重要ではなく、低格子解像度(低解像度)でも、画像は影響を受けません。 格子解像度を下げると、1波長あたりの節点数(pts/λ)がそれに応じて減少します。 解像度には高い処理能力を必要としないため、場合によってはデータ取得速度が2倍以上まで戻ります。
エンベロープがオンで、格子解像度が低い場合 — このTFM格子解像度は2.9pts/λLです。 その結果、PRF(またはデータ取得周波数)が増加しますが、画像に大きな歪曲収差は見られません。
通常、超音波検査(UT)では、1波長あたりの節点数が多いほど、解像度と画質が向上しますが、TFMエンベロープの性能はこの常識に当てはまりません。 解像度とpts/λを下げた後でも、エンベロープによって提供される高画質が維持されます。
振幅忠実度と格子解像度へのTFMエンベロープの影響
1波長あたりのラムダ(pts/λ)の読み取り値は、許容可能な振幅忠実度を維持するための重要な要素です。 ASMEの新しいTFM資料などに記載された検査規程によれば、振幅忠実度が約2dB以下で安定している必要があります。
エンベロープを使用しない場合、約7pts/λの比率により、2dBの振幅忠実度変動が確実に保持され、その結果、高い格子解像度が得られます。 エンベロープがオンの場合は、検出に必要な最小振幅忠実度を確実に維持するための比率が2pts/λまで低下させることが可能です。 通常、エンベロープで得られるような画質を維持するには、約3pts/λに設定する必要があります。
エンベロープを使用する場合は、処理アルゴリズムには実際の信号と理論信号の両方が含まれるため、より低い格子解像度を使用できるというわけです。 詳細については、アプリケーションノート「超音波探傷器 OmniScan X3のトータルフォーカシングメソッド(TFM)の格子解像度の定義での振幅忠実度の測定の使用」をご覧ください。
経験に裏打ちされた信頼性の高いTFMエンベロープ
格子解像度を簡単に調整できるため、エンベロープを使用しながらでも、高いデータ取得周波数を実現できます。 しかし、克服しなければならないハードルがもう1つあり、それが一部の検査員がエンベロープを使用したがらない2つ目の理由です。TFMは、あまり知られていない新しいテクノロジーであり、エンベロープはそれよりさらに新しいものです。 エンベロープの機能を最終的に信頼するには、各自で検討を行う必要があるかもしれません。
大切な点として、情報が失われないことを覚えておいてください。 逆に、エンベロープの再構成効果により、欠陥の信号は増幅されます。
欠陥の鮮明な画像を一貫して提供するTFMエンベロープ
このエンベロープがTFM画像をより鮮明にすることが、当社の検証で繰り返し確認されています。 高温水素侵食(HTHA)など、標準的なフェーズドアレイでは通常見づらく、特徴づけが難しい欠陥の診断に非常に適しています。
エンベロープがオンになっている超音波探傷器 OmniScan X3によって取得された初期段階のHTHAのTFM画像の例
高温水素侵食(HTHA)は、製油所、石油化学用タンク、パイプラインなどで使用される、高温で水素にさらされる鋼に徐々に発生する潜行性の腐食です。 TFM画像を使用すると、早期にHTHAを検出できるため、障害の回避策を講じることができます。
ほとんどの革新的なテクノロジーと同様、百聞は一見にしかず
検査員が実際に現場でエンベロープを使用して試料を確認すれば、その成果は明らかとなるでしょう。 革新的なイノベーションのほとんどがそうであるように、人は自分の目で確かめなければ、なかなか信じがたいものです。
エンベロープと当社の革新的なTFMソリューションの詳細については、お近くのオリンパス担当者までお問い合わせください。 または、当社ウェブサイト(www.olympus-ims.com/phasedarray/omniscan-x3)で詳細をご覧いただくか、体験デモのお申し込みフォームに記入し、送信してください。