心配の種：化粧品における危険なレベルの水銀検出

By Michelle Wright - 2021年 10月 19日

水銀は非常に有毒です。過剰に摂取すると、神経過敏、抑うつ、記憶障害等、神経学的影響の原因になる恐れがあります。水銀中毒は魚介類を食べることに関連して発生することが多く、一部の化粧品やスキンケア製品からも危険なレベルの水銀が検出されています。

米国食品医薬品局（FDA）は、化粧品に含まれる水銀の法的限度を1 ppm以下と定めています。しかし、世界のすべての地域で化粧品が規制されているわけではありません。

つまり、海外で製造された水銀含有の化粧品を、旅行先やオンライン業者経由の注文で購入する可能性があります。既知の有毒成分またはその可能性があるものを原料としない、クリーンな美容製品の人気が高まってはいるものの、世界規模では規制されていません。

人々の命と健康を守るため、当社は世界中の政府規制機関と関わり、ポータブル蛍光X線（XRF）分析計で化粧品に含まれる水銀（Hg）成分を識別してきました。

このブログでは、XRFなどの手法を使用して、化粧品に含まれる水銀を識別する方法についてご紹介します。

化粧品やスキンケア製品から水銀が検出される理由

水銀は漂白剤として作用可能なため、シミ、シワ、そばかすを取り除くことをうたった美白やアンチエイジング製品に含まれる場合があります。

水銀は安価な原料で、製品の保存可能期間を長くする防腐性も備えています。米国では水銀含有製品の販売は禁止されていますが、外国製の一部の美白クリームに210,000 ppmもの高レベルの水銀が含まれていることが、研究者によって明らかになりました。1 ppmの上限をはるかに超えています。

化粧品やスキンケア製品内の水銀を識別する方法

化粧品に水銀が含まれているのではないかと思ったら、まずラベルを確認します。 FDAによると、水銀は以下のように記載される可能性があります。

Mercurous chloride（塩化第一水銀）
Calomel（甘汞）
Mercuric（塩化第二水銀）

Mercurio（水銀）
Mercury（水銀）

他の兆候としては、化粧品の原料不記載、製品ラベルの欠如、英語以外のラベルが貼付され英語のラベルがないことが挙げられます。米国連邦法では、あらゆる化粧品または市販薬のラベルに原料を表記することが求められています。

健康への影響の可能性を避けるには、化粧品に水銀が含まれていると疑われる場合に用心することです。以下に安全を守るためのヒントをいくつか挙げます。

製品の使用をすぐに中止
製品に接触した手や体のあらゆる部分をよく洗浄
身体を守る他の方法について助言を求め医療関係者に連絡
製品を漏れ防止容器やビニール袋に密封してから、地元の環境機関に適切な廃棄方法を確認

これらのヒントが水銀を含む化粧品を避けるために役立つ一方で、ポータブルXRFなどの分析法は、政府規制機関の水銀レベルについて決定的な答えを提供してくれます。

化粧品内の水銀の検出：XRFとICP-MSの比較

ポータブルXRF分析は、化粧品内の水銀レベルを測定するための効果的な手法です。非破壊的であることと、有害成分の存在をppmレベルまで迅速に測定可能であるためです。 Vanta™ XRF分析計のユーザー校正が持つ柔軟性は、この用途に最適です。ユーザーは非常に少量の試料でカスタム校正を作成でき、XRF装置でパラメーターを可能性のある濃度範囲に適用できます。

化粧品試料内の水銀を検出するもう一つの手法は、誘導結合プラズマ質量分析（ICP-MS）です。従来の元素分析法として高い正確性で水銀を検査できますが、費用が高く、分析の完了まで数日かかる場合があります。また、ICP-MS装置は非常に繊細です。水銀レベルが高い材料をICP-MS装置に注入すると、チューブ、トーチなどの部品が汚染されます。システムからすべての水銀を洗い流すのは時間がかかります。

2つの手法を比較すると、化粧品内の水銀検出にはポータブルXRFの方が実用的です。堅牢設計、手軽な価格、高速性。精度も損なわれません。しかし、この2つのツールは水銀レベルを確認するために併用される場合があります。

例：ポータブルXRFを使用した化粧品内の水銀スクリーニング

例として、ある規制機関はVantaハンドヘルドXRF分析計をスクリーニングツールとして使用して、化粧品の水銀濃度を調べています。 Vantaは、ICP-MSにかけてはならない高濃度の水銀の、おおよその希釈係数を判別する際に役立ちます。この場合、希釈係数とは、水銀濃度を管理可能なレベルに低減するために必要な材料の量をいいます。

前述したように、化粧品に含まれる水銀の上限は非常に低く設定されています（1 ppm）。化粧品会社が上限を超える水銀を使用した場合、製品には10～50 ppmが含まれている可能性があります。 Vanta VMR XRF分析計は、2 ppmまでの低濃度の水銀を検出可能です。この規制機関では、化粧品が要件を満たしているかを判別する最初の検査にポータブルXRF機器を使用しています。詳細な検証が必要な場合は、ICP-MSを使用して結果を確認します。