自動車の開発・製造工程において、品質保証は極めて重要と考えられています。部品のほんの小さな欠陥であっても、重大な事故につながりかねないからです。エンジンなどの自動車の中核となるコンポーネントの品質を検査する際には、一般的に工業用内視鏡が使用されます。工業用内視鏡は自動車産業の品質向上に広く貢献しています。
一方、電気自動車(EV)の急速な需要の高まりによって、内視鏡検査が求められる領域も広がっています。検査対象となる部品が、従来の内燃機関を構成する部品とは異なることから、検査手法や内視鏡に求められる機能も若干異なります。その一例が、電気自動車や最新の車両の重要な部位であるインバーターの検査です。
このブログでは、EVのインバーター検査を効率化するためのヒントと、それを実現する内視鏡を選択するうえでの重要なポイントを解説します。
電気自動車のインバーターとは
インバーターとは、直流(DC)電力を交流(AC)電力に変換する電子機器のことです。電気自動車やハイブリッド車では、インバーターがトラクションモーターへの電気供給・制御を行い、車輪を駆動しています。
インバーターは、AC周波数を制御し、モーターの回転やトルクを調整する役割を担っています。この調整を細かく制御することで効率の良い駆動が可能になり、これが乗り心地にも左右します。今後の更なる電気自動車の普及に伴い、インバーターの需要も増えると予測されます。
電気自動車のインバーター例
EVインバーターに内視鏡検査が必要な理由
インバーターの組み立て完了後、基板のはんだ付け部分の検査に、内視鏡が使用されます。具体的には、はんだ付けが適切に行われ、異物などの付着がないことを内視鏡でチェックします。ここに異常があると、自動車の速度制御機能やその他の機能に悪影響を及ぼすからです。組み立て前にも、はんだ付けの外観検査を目視で行っていますが、検査対象の部品が小さいため、欠陥を見逃してしまう場合もあります。そのため、組み立て後の内視鏡による詳細な検査の実施が重要となります。
電子回路基板
インバーターは電気自動車にとって重要な構成部品であるため、全数検査を実施するケースが多くあります。その場合、製造工程において数十秒ごとに検査が行われることになります。欠陥が見つかり、詳細な調査が必要となった場合は、品質部門へ検証を依頼することが一般的です。
このように製造部門で全数検査を実施する場合、部品ひとつあたりの検査にかけられる時間は限られてしまいます。こうした状況が欠陥の見逃しにつながる可能性があります。そのため、製造工程における検査での見落としを防ぐことが、インバーターの品質維持のために重要となります。
EVインバーター検査における課題
インバーターの検査では、検査対象箇所へ到達するための挿入口が狭いため、一般に細径のビデオスコープが求められます。検査員は基板の小さい穴からスコープを挿入し、はんだ付け部分が観察できる位置まで到達させます。狭い挿入口を通して短時間でスコープを検査箇所まで到達させる必要があり、そのためにはスコープの微細なコントロールが求められます。
もうひとつの課題は照明です。基板は挿入口が狭いにも関わらず、基板内の空間は広いので、適切に検査を行うにはスコープの一定の光量が必要になります。一方で、検査対象のはんだ付け部分はスコープを近づけるとハレーションを起こす傾向があるため、適度に光量を調整する必要があります。
まとめると、インバーターの内視鏡検査を適切に、短時間で効率的に行うには、スコープの微細なコントロールに優れ、検査対象との距離に合わせて光量の調整が可能なビデオスコープを選択することが重要となります。
EVインバーター検査に適したビデオスコープの選択
IPLEX™ TX IIビデオスコープは、インバーターの検査において求められる機能を備え、その検査を効果的に行えるという評価を、インバーター関連企業からその検証を経て獲得しているビデオスコープです。その理由は以下のとおりです。
1. 挿入性能
IPLEX TX IIビデオスコープは外径2.0mmの極細径フレキシブルスコープを備え、インバーター基板の狭い挿入口からの挿入も問題なく行えます。挿入後、スコープを短時間でスムースに検査対象箇所へ到達させるためには、挿入性の高さがカギとなりますが、IPLEX TX IIビデオスコープは挿入性の向上に主眼を置いて設計され、それを実現しています。
極細径のビデオスコープは内部構造のスペースに限界があり、先端部の湾曲方法が上下の2方向に限定されてしまいます。そのため検査時に、湾曲部の左右から負荷がかかった状態でスコープを無理に押し込むと、湾曲部が損傷してしまうケースがありました。
IPLEX TX IIビデオスコープは挿入部構造の改善により、スコープ先端が全方向に曲がる柔軟性を確保しており、それにより高い挿入性を実現しています。加えて、先端硬質部の長さが短いことで、小回りがききます。これらの特長によって、IPLEX TX IIは挿入性において、インバーター検査に適したビデオスコープといえます。
IPLEX TX IIビデオスコープは狭い空間での高い挿入性能を備えています。
2. 光量調整
効率的なインバーター検査を実現する二つ目のカギである光量の調整についても、IPLEX TX IIビデオスコープは求められる機能を備えています。ビデオスコープに装備されるシーンモードは、明るさなどの設定を保存し、その設定に適した検査対象に合わせて設定の切り替えが行える機能です。
次の例で、この機能がどのように有効に働くか、見てみましょう。検査員が、広い空間の観察に適した明るさと、はんだ付けの詳細を近接して観察するために適した明るさをそれぞれ必要だとします。それぞれの明るさを設定しておけば、ボタンひとつで検査箇所に応じた明るさの切り替えが瞬時に行えます。これにより、検査にかかる時間を短縮できます。
IPLEX TX IIビデオスコープのシーンモードを使用して、検査箇所に応じた明るさを瞬時に切り替えることができます。
3. 広い視野角
さらに、IPLEX TX IIビデオスコープは120度の視野角を確保しています。一般に、細径のビデオスコープの視野角は60~90度と狭く、一度に観察できる範囲が限られます。IPLEX TX IIビデオスコープは視野角が120度なので、一度に広い範囲を観察できます。この点が、検査時間の短縮につながるもうひとつの要素です。
120度の視野角を持つIPLEX TX IIビデオスコープでは、一度に広い範囲を観察できます。
EVインバーター検査の効率向上
以上のことから、電気自動車を構成するコアとなる部分のひとつであるインバーター検査に適したビデオスコープとして、IPLEX TX
IIをお勧めできます。インバーターの検査に限らず、e-Axleの冷却炉やギアの検査など自動車部品関連の内視鏡検査でお悩みの場合は、当社にお問い合わせください。お客様の検査ニーズにぴったりのソリューションをご提案します。