石灰石は石灰やセメントの調合に使用される主な原材料であるほか、鉄や製鋼の溶融剤としても用いられます。 この資源は豊富で、世界各地に広く分布しています。
ポータブル蛍光X線(pXRF)およびX線回折(pXRD)分析計は、地質学者、冶金学者、科学者に、石灰石試料の元素情報と鉱物学的情報を提供します。 この定量データはリアルタイムに届くので、情報に基づく迅速な判断に活用できます。 例えば、冶金学者は分析データを用いて効率的な精製および精錬プロセスを開発し、鉱石回収率を向上することができます。
これらのポータブル分析法の仕組みと、石灰石分析における重要な利点について見ていきましょう。
ポータブルXRDを使用した石灰石分析
TERRA™ IIやBTX™ IIIなどの携帯可能な小型のX線回折装置は、石灰石試料の化合物組成を判定し、含有量を定量分析することができます。 鉱物の定量分析は、地質学者が化学分子式を用いて酸化カルシウムの濃度を逆算し、以下のことを判断する際に役立ちます。
- 掘削孔を放棄するか、さらに深い層まで掘削を続けるか
- 掘削位置
- 特定の地域で探査と試掘を続行するか
以下の図表は、中国の新疆および広西自治区で採取した石灰石試料の定量分析を示しています。 オペレーターはBTX III XRDを使用して試料の回折パターンを取得した後、XPowderソフトウェアで回折パターンの定性分析と定量分析を実施しました。
試料番号 | 方解石 | 石英 | その他 |
---|---|---|---|
1 | 84.2 | 8.4 | 7.4 |
2 | 92.1 | 2.5 | 5.4 |
3 | 91.2 | 3.5 | 5.3 |
石灰石試料についてBTX III XRDによって生成されたスペクトル
このデータでは、石灰石試料の採取区域によって、方解石の濃度に顕著な差が見られます。
一般的に、地質学者はさらに詳細な調査と研究を実施するために、方解石の含有量が多く、シリカまたはドロマイトの含有量が少ない石灰石試料の採取場所を選択します。 方解石が主要組成である石灰石は、炭酸塩と呼ばれます。
石灰石分析にポータブルXRD装置を使用する利点
リアルタイムの定量データとポータブル設計に加えて、オリンパスpXRD装置には、その他に以下のような便利な利点があります。
- 必要な試料サイズが小さい(たったの15 mg)
- 試料の前処理が容易
- 精密で正確なX線回折が可能な独自の振動型試料室
- XRDおよびXRF検査を同時に実施できるため、現場での判断が迅速になる
ポータブルXRFを使用した石灰石分析
オペレーターはポータブルXRFを使用して、現場で石灰石に関する補足的な材料分析を行います。 例えば、Vanta™分析計のようなpXRF装置は、元素または化合物の結果を表示できます。ユーザーは必要に応じて、これらの検査結果を切り替えることができます。 採石場の岩の表面で測定可能なので、処理前に混合材料まで発破をかけるのに最適な場所を決めることができます。
ここでポータブルXRF分析を使用する実例を紹介します。 下の画像は、中国の広西自治区にある石灰石鉱山から採取した鉱石試料を、Vanta XRF分析計で分析している技術者を示しています。
Vanta XRF分析計で石灰石試料を検査する技術者
採鉱されたばかりの鉱石試料は粒度にかなりばらつきがあるため、前処理をしていない鉱石試料を分析すると、方解石の含有量が大きく異なる結果を生む可能性があります。 したがって、最良の方法は、未加工の鉱石試料を現場で粉末状に砕き、特殊な試料カップに入れて検査するやり方です。
Vanta XRF分析計による、前処理済みの石灰石試料の検査
いくつかの前処理済み試料を分析した後、技術者は以下の結果を取得しました。
酸化カルシウム(ラボ) | Vanta VCRモデル(180秒)、校正なし | 絶対誤差 | 相対誤差 |
---|---|---|---|
52.67 | 52.32 | -0.35 | -0.66 |
51.65 | 50.75 | -0.90 | -1.74 |
50.98 | 49.3 | -1.68 | -3.30 |
52.5 | 51.17 | -1.33 | -2.53 |
このデータは、ラボの測定結果とVanta分析計で取得した測定結果の間に、十分な一致が見られることを示しています。
石灰石分析にポータブルXRF分析計を使用する利点
Vanta XRF分析計を使用すると、未知の試料の主要化学組成と構成元素の濃度を、パーセント単位ですばやく特定できます。 実際、現場でのサンプリングから結果の取得まで、分析の実行にかかる時間は約20分だけです。
- サンプリングに5分
- 試料準備に5分
- 検査に8分
- データ解析に3分
これに対して、同じ試料タイプにラボベースのXRF分析を行うと、1カ月近くかかります。つまり、試料の配送に約1週間、待ち期間が1~2週間、分析レポートの取得に1週間かかる計算です。
pXRDおよびpXRFを使用した現場の即時検査によって、現場での迅速な判断が可能になり、従来のXRDやラボベースのXRF分析に比べて、時間と費用の両方を節約できます。