超音波探傷の基本原理を踏襲
初めに、トータルフォーカシングメソッド(TFM)は、従来の超音波探傷(UT)やフェーズドアレイ(PA)と同じ物理法則に従っていることに注意してください。 フェーズドアレイを使用した電子フォーカシングは、個々のプローブ素子からなる複数の波面を、焦点と呼ばれる小さい領域に集束させる能力です。 集束が可能なのは、フェーズドアレイプローブの近距離音場内のみです。
近距離音場の終端は、集束されない超音波ビームの伝搬軸に沿った最大圧力音場の限界に一致します。 これはプローブのパラメーターで定義されます。素子サイズ、周波数、材料内の音速などです。 PAにおいて、近距離音場は集束が起こり得るゾーンです。 この範囲外での検査は非集束と見なされ、従来UTと同様にビーム振幅と分解能がビーム路程とともに低下します。 TFMにおける集束と近距離音場の制限も同様であり、PAUTに当てはまることはTFMにも当てはまります。
プローブ特性の考慮事項と集束能力のトレードオフ
プローブの周波数、素子サイズ、素子数などの要素は、検査の設定と品質に影響します。 例えば、近距離音場距離はプローブの周波数と開口幅サイズに正比例するため、プローブの周波数が高く、開口幅が大きいほど、プローブ面から離れた位置で集束可能であり、大きな集束域と優れたTFMイメージングが実現します。 その一方で、表面近傍分解能は逆の影響を受けます。
実験的試験に頼ってTFM設定に適したプローブを判断するのは、関連するあらゆる変数を考慮すれば非現実的です。 TFM検査設定にモデリングツールが欠かせない理由は明白です。
TFM検査用のプローブ選択におけるモデリングツールの必要性
OmniScan™ X3探傷器に内蔵されているAcoustic Influence Map(AIM)モデリングツールを使用すると、得られるTFM信号の品質を予測しやすくなります。 ツールで表示されるのは、選択した波形セットを使用して、特定の反射源に対して所定のプローブとウェッジを組み合わせた場合に予測される超音波応答です。 設定時に適切なプローブやウェッジなどの正しい選択ができるようになります。
AIMを振幅応答が最も強い場所を示すヒートマップとして考えれば、感度インデックスは最大温度のようなものです。 どこまで「熱く」なり得るかのハードリミットはありませんが、熱いほど望ましくなります。 特定のパラメーターセット(選択したプローブ、ウェッジ、反射源の形状と角度、波形セットなど)に対して生成されたAIMの予測感度インデックスを、 別のAIMと比較することで、検査ニーズに最適な設定がわかります。
AIM:TFMの感度に対するプローブのピッチの影響がわかる例
以下のスクリーンショットは、プローブ周波数(5 MHz)とその他の設定が同じで、素子サイズ(ピッチ)が異なるAIMのシミュレーションです。 この例で、素子サイズが有効軸に対して大きくなると、感度インデックスも高くなります。
5L64-A32プローブモデル:合計開口幅32 × 10 mm、ピッチ0.5 mm、エレベーション10 mm、TTパルスエコー波形セット |
5L64-A12プローブモデル:合計開口幅38.4 × 10 mm、ピッチ0.60 mm、エレベーション10 mm、TTパルスエコー波形セット |
5L64-NW1プローブモデル: 合計開口幅64 × 7 mm、ピッチ1.00 mm、エレベーション7 mm、TTパルスエコー波形セット |
AIM:感度と検査範囲に対するプローブ周波数の影響がわかる例
プローブ周波数もAIMシミュレーションに影響があり、ひいてはTFM検査にも影響します。つまり、プローブ周波数が高いほど、近距離音場から遠距離音場へと移行します。 以下の例で、周波数が高いプローブほど感度インデックス値が高くなり、フルスキップ全体でAIMの色合いに一貫性が増しています。ビーム路程が長くなっても振幅および欠陥指示サイズに変動がないことを意味します。
5L64-A32プローブモデル:周波数5 MHz、合計開口幅32 × 10 mm、ピッチ0.5 mm、エレベーション10 mm、TT-TT波形セット
感度インデックス:18.68
10L64-A32プローブモデル:周波数10 MHz、合計開口幅32 × 10 mm、ピッチ0.5 mm、エレベーション10 mm、TT-TT波形セット
感度インデックス:27.38
適切な準備と優れたTFMスキャンプランには、AIMなどの実用的なモデリングツールに加えて、プローブ戦略と実現可能性試験を組み込んで、検査対象領域が正しくカバーされていることおよび信号品質が良好なことを確保する必要があります。
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