Christopher Brown、Ph.D.
工業生産の世界において、表面測定は、製品の開発、プロセスの改善、および品質保証で中心的な役割を果たしています。工業的表面測定は1930年代に自動車産業の一部として始まりましたが、当時のほとんどの測定器具は接触センサーに基づいていました。1960年代に入ると、マイクロエレクトロニクスと関連した複雑な構造が登場し、磁気テープに対する接触センサーの測定圧力を減らす必要が生じました。非接触測定技術は、新たな産業が磁気テープの製造と品質保証プロセスの一部として表面測定を使用しはじめたことに伴って開発されました。
接触スタイラスから光学センサーへ
マイクロエレクトロニクスと関連した、より小さく、より柔らかい対象物に対する有効な測定法を提供するために、接触スタイラスでは極めて困難または不可能な測定を行える、光学センサーが開発されました。当初、光学センサーはマイクロエレクトロニクスのみに使用されていましたが、機械的アプリケーションにも役割が見出されるようになりました。例えば、高性能ディーゼルエンジンに不可欠な高圧噴射装置には極めて精密なシール面が求められるため、製造プロセスに光学測定が必要とされました。スペースシャトル・チャレンジャー号の事故後には、シャトル爆発の要因と考えられたOリング溝の粗さの分析に光学センサーが使用されました。
「ノイズ」を理解する:大量の光学データを解釈する
光学機器の傑出した特徴の1つは、大量の測定データを供給する能力です。当初、光学センサーのユーザーは、測定値から使用可能な全てのデータを抽出する方法と、その結果得られた画像に確信が持てませんでした。例えば、初期の光学センサーでは、現在なら利用可能であったと考えられる微小スケールの細部の一部が、観察者には「ノイズ」のように見えていたのです。データ解釈法が進歩するにつれて、光学センサーのユーザーは、そうした多くの「ノイズ」が実際には極めて意味のある測定データだったのだということを理解しはじめました。現在、研究者および国内・国際規格組織は、我々がこのデータを解釈し、光学測定を潜在能力の限界にさらに近づいて使用することができる方法の開発を続けています。
全ての側面を見る:面測定と表面測定学
光学面測定を使用することにより、ユーザーは3Dで画像を生成できるようになります。現在、光学面測定は、重要なシーリングアプリケーション、マイクロエレクトロニクス、MEMSシステム、ナノテクノロジー、医療機器、研磨材、高度な製造、および人類学に使用されています。表面を識別し、測定値と加工および性能との有用な相関を見出すことにより、面測定は表面測定学に多大な価値を付加することができます。より多くの表面を観察することにより、携帯電話のカメラの小型化からジェットエンジンの燃費改善まで、広範囲にわたる新たなチャンスを得られるようになるでしょう。また、面測定は、高精度モデルの製作と、ダイヤモンド旋盤のような機械加工ツールの開発においても重要です。
世界的測定規格を確立する
米国では、現在私が委員長を務めるASME B46が、表面の測定とキャラクタリゼーションに関する規格の書籍を刊行しています。歴史的に見て、我々の委員会メンバーの大部分は自動車産業の出身ですが、今日では様々な産業に加えて自然人類学のような自然科学からの参加者も招き入れています。
表面測定学の最初の規格は、1940年に米国で制定されました。それ以来、我々の米国規格は世界中で広く使用されてきました(米国は面に関する多くの規格の草分けでした)。私が参加しているISO委員会TC213が、現在数多くの表面規格を提供しており、それらは個別に入手することができます。
レーザー走査型共焦点顕微鏡と将来の課題
非接触光学測定システムは、対象物のサイズ、解像度、獲得速度、およびその他の要素に関して数多くの利点を提供します。同システムの総合的な能力は驚くべきもので、理論上可能な最高解像度(研究者は500ナノメーターの溝についてトポグラフィー的な詳細の観察と測定が可能)を実現することができます。
私の研究では、レーザー走査型共焦点顕微鏡は最も有用な光学測定システムの1つです。水平方向と垂直方向の、バランスの取れた高解像度がその理由です。過去30年にわたるこの分野の成長は驚異的なものでした。例えば我々は、レーザー走査型顕微鏡による測定が解像度数千画素の縦断面図から始まり、解像度1600万画素を超える面測定(画素サイズ1024または4096が選択でき、画像の張り合わせでさらなる測定範囲が得られる)に到達したことを見てきました。
レーザー走査型顕微鏡に関して今後対処すべき課題は、主に計算処理上の問題であり、その例として特定のジオメトリの測定、ノイズ除去、サンプルサイズ、適応性などが挙げられるでしょう。この技術が今も急速な成長を続けていることを考慮すれば、これらの課題やその他についても、レーザー走査型顕微鏡が発展する中で解決されていくと確信することができます。
| Christopher Brown博士はウスター工芸研究所の機械工学教授であり、表面測定学研究室のディレクターです。彼は以前スイス連邦工科大学の材料学部在職中に機械加工表面を研究し、アトラス・コプコ社のヨーロッパ研究センターでは製品およびプロセス開発に携わっていました。 |
Christopher Brown教授のオリンパスLEXTレーザー走査型共焦点顕微鏡に関する著作
- Matthew A. Gleason, Stephen Kordel, Adam Lemoine, Christopher A. Brown, Profile Curvatures by Heron’s Formula as a Function of Scale and Position on an Edge Rounded by Mass Finishing, 14th International Conference on Metrology and Properties of Engineering Surfaces (Met & Props 2013),Taipei, Taiwan, June 17-21, 2013.
- G. LeGoic, C.A.Brown, H. Favreliere, S. Samper, F. Formosa1 (2013) Outlier filtering: a new method for improving the quality of surface measurements, Meas.Sci.Technol.24 doi:10.1088/0957-0233/24/1/015001
- S.A.Hacking, P. Boyraz, B.M.Powers, E. Sen-Gupta, W. Kucharski, C.A.Brown, E.P. Cook (2012) Surface roughness enhances the osseointegration of titanium headposts in non-human primates, Journal of Neuroscience Methods, vol. 211 issue 2, 237-244.DOI:10.1016/j.jneumeth.2012.09.002.ISSN:0165-0270.
- Powers, B.M., Cohen, D.K., O’Hearn, J., Brown, C.A.(2010) Scale-based comparison of interferometric, confocal and stylus measurements and their ability to discriminate, Proceedings Precision Interferometric Metrology, 2010 ASPE Summer Topical Meeting, ASPE, Raleigh, 86-90.
- C.A.Brown, B.Powers, Design of Surface Metrology Systems, North American Manufacturing Research Conference, NAMRC 3, Queen’s University, Kingston, Ontario, May 25-28, 2010.
- C.A.Brown, On the Importance of Scale-based Characterization for Discrimination and Correlation, International Conference on Surface Metrology, C.A.Brown, M. Massey and O.Paracha, eds., WPI, Worcester, MA 26-28 October 2009, p IX 12-14 (extend abstract).
- D.R.S.Brown, C.A.Brown Investigation of the Surface Topography Differences in Native and Exotic Invertebrates in the St. Lawrence River, International Conference on Surface Metrology, C.A.Brown, M. Massey and O.Paracha, eds., WPI, Worcester, MA 26-28 October 2009, p V30-33 (extend abstract).
- D.R.S.Brown, C.A.Brown, On the Assessment of the Quality and Utility of Texture Measurements of Unusual Surfaces, Proceedings of the 12th International Conference on Metrology and Properties of Engineering Surfaces, Ed Pawlus et al., Rzeszów University of Technology, July 8-10, 2009, Rzeszów, Poland, 231-236.
- Christopher A. Brown, Brendan M. Powers and Gergory Hesler, The Non-uniqueness of Surface Area with Respect to Scale in Roughness Characterization, Microscopical Society of Canada, University of Manitoba, Winnipeg, Manitoba, 17-19 June 2009 (extended abstract).
- Christopher A. Brown, Douglas R. S.Brown*, Joseph A. Feula, Gregory Hesler, Brendan M. Powers Discrimination of Surfaces using Surface Texture Measurements and Area-scale Analysis, Microscopical Society of Canada, Winnipeg, 17-19 June 2009 (extended abstract).
- Powers, B.M., Cohen, D.K., O’Hearn, J., Brown, C.A.(2010) Scale-based comparison of interferometric, confocal and stylus measurements and their ability to discriminate, Proceedings Precision Interferometric Metrology, 2010 ASPE Summer Topical Meeting, ASPE, Raleigh, 86-90.
- T. S.Vincent, I. Bar-On, C.A.Brown ,“Examination of Surface Roughness Effect on Insertion loss at Microwave Frequencies using Conventional Surface Roughness Parameters within LTCC Structures” ICIMT IMAPS/ACerS April 2007 proceedings pp 138-144