Richard Leach教授
表面テクスチャー測定の歴史は、1世紀前に接触型2D測定の出現とともに始まりました。光学機器を使った測定も接触型測定とほぼ同じ時期を通して存在していますが、光学機器による測定は、約30年前まで広く使われることはありませんでした。約20年前に共焦点機器が導入されると、それ以来、数多くの異なる光学測定技術が開発されてきました。光学測定は、製造業に使われる機会の急速な増加に伴って発展し、将来もさらなる拡大が予想されます。
これまで、接触型2D測定は主に造船、鉄鋼、自動車製造などの製造業に使用されてきました。しかしこの20年の間に、表面テクスチャー測定は、光学、航空宇宙、医療機器、光電池、プラスチック製電子機器および電子ペーパーを含む、さらに多くの産業にとって重要なものになってきました。これらの産業は、表面テクスチャーに対して、表面がどのように機能するか(流体の流れ、光の反射、表面トライボロジーなど)に影響を及ぼすことを求めるという点で、過去に表面測定が利用されていた産業とは異なっています。加えて、機械加工プロセス全体に対するより良好なコントロールと機能性が要求されたことから、より迅速な測定を可能にする光学3D表面テクスチャー測定が広範囲にわたって使用されるようになりました。
接触型測定とは異なり、光学機器による測定は表面との直接接触を必要とせず、代わりに、表面からの光の反射に基づいた測定が行われます。この違いのため、2つの方法の間には最近まで測定結果に大きな違いが生じており、信頼性が非常に高い接触測定法に対し、非接触測定の結果は時に精度に欠けることがありました。しかし、国際標準化機構(ISO)が、機器の形式に左右されない定義された計量特性を有する、仕様基準を確立しつつあります。これを用いることで測定結果を比較できるようになったため、接触測定と非接触測定の両方で追跡性が確保されています。その結果、光学機器は表面テクスチャー測定の手段として広く受け入れられるようになりました。
これらの規格に加えて、NPLでは、異なる測定結果の有効な比較方法に関して産業を啓発するための、優良慣行ガイドを作成しました。
英国の国立物理学研究所(NPL)は、全ての種類の測定に関する追跡性の確保に努める国家測定機関です。NPLは現在、測定に関連する様々な問題の解決を目的に、測定方法や使用機器の種類によって測定結果が歪曲されることを防ぐという最終的なゴールを掲げたプロジェクトに着手しています。これらのプロジェクトの一部には、様々な測定機器の光学伝達関数を定義するという構想も含まれています。光学伝達関数を使用することにより、複雑な表面に対する機器の反応が校正され、場合によっては機器の調整も可能になるので、光学機器で得られる結果が接触機器の結果と異なる原因となる体系的な影響をある程度排除できるようになります。NPLは、こうした定義が最終的にISOに採用されることを期待しています。
レーザー走査型顕微鏡などの共焦点顕微鏡の際立った特徴は、アプリケーションの幅が極めて広いということです。非常に滑らかな表面から比較的粗い表面に至るまで、様々な種類の表面の測定が可能になり、非常に広い面積をカバーすることもできます。レーザー走査型顕微鏡はダイナミックレンジが広く、鋭角な斜面を測定することさえ可能です。
レーザー走査型顕微鏡は、現在までのところ、大きな高度範囲に対する測定能力を有し、小面積の高速測定が可能な、最高の位置分解能を有する光学機器です。表面テクスチャー測定の将来に、この機器が大きく貢献することが期待されます。上記の校正に関する問題が解決されれば、レーザー走査型顕微鏡の有効性がさらに向上することは間違いありません。特に、欧州におけるインライン測定の需要が予想されるため、間もなく産業界は、レーザー走査型顕微鏡がより大きな表面を、さらに速い測定速度で測定可能になることを期待するようになると考えられます。
国立物理学研究所の主任研究科学者であるRichard Leach教授は、物理学会およびナノテクノロジー研究所のフェローです。Leach教授は、表面微細構成、マイクロ座標測定学、およびX線トモグラフィーを含む、マイクロ~ナノスケールの特徴に関する測定法の開発とキャラクタリゼーション技術の専門家です。 |
Richard Leach教授のオリンパスLEXTレーザー走査型共焦点顕微鏡に関する著作