表面の不規則性は工業製品の品質と性能に重大な影響を与えることがあり、ひいてはこれらの不規則性が工業製品の価値にも影響する場合があります。工業生産には、高度な機械加工技術、製品品質試験、および機械加工プロセス管理が要求されます。表面を作成する際、目標とする範囲があり、その範囲を確認する機器および必要とされる手法があるはずです。この品質を確認する手法が測定であり、これに最も一般的に使われているツールが接触式機器(接触スタイラス)です。 接触式測定は、測定する表面に沿って直接スタイラスの先端を移動させることによって不規則性を検出するため、信頼性の高い測定データが得られます。このような測定に関して制定された規格が、工業製品の供給と信頼性の向上に寄与してきました。
接触式技術は信頼性の高い測定を実現しましたが、測定する表面にスタイラスが接触するため、先端部のサイズに起因して表面テクスチャーの最奥部への到達が制限され、また先端部は摩擦によって丸くなってしまいます。また、測定圧によって測定する表面が傷つけられることもあります。その結果、測定値が実際の表面粗さと異なる場合があります。 現在では、摩擦抵抗の高いダイアモンドをスタイラスに使用し、先端部の形状が可能な限り狭められ、測定圧を微細に調整できるようになっています。機器の精度自体が劇的に向上したことに加えて、接触式機器の精度の標準化が進められ、工業製品の品質向上に貢献しています。しかし、接触式測定に関連する全ての問題が解決されたわけではありません。期待される製品品質が高まるにつれて、表面粗さの評価方法はより微細な表面を評価すべく発展を続け、それに伴い「線」の粗さから「面」の粗さへのシフトが起きています。接触式スタイラスの代わりに、次世代の表面粗さ測定の中核として「光」を使用することに、現在の製造業者の期待は高まっています。
約30年前、接触式測定の標準化が進められていた頃に、光を使用する最初の測定機器が登場しました。光の利点は、摩擦の影響を一切受けることがなく、測定する表面を傷つけることもなく、迅速に測定することができ、使いやすい機器類を利用できるということです。これらの利点が技術の新しさと相まって、高い期待が寄せられました。しかし、初期の測定結果は、接触式の機器で取得した測定結果と大きく異なっていました。測定データの不一致の原因が、光散乱の変動や反射光の量といった、光に特有の現象にあることは明らかでした。現在では、光を使った測定は精度を増し、光で取得した測定データは接触式機器から得られたデータに近づいています。
光の利点は、非接触で、面測定が可能であり、高速で測定できることにあります。非接触と面測定という利点によって、柔らかい、薄い、あるいは幅が広い工業製品の全ての領域で、測定対象を傷つけることなく迅速に測定できるようになりました。光を使った測定は、均一かつ均質であることが期待される、大量生産される工業製品にとって、不可欠になものになりつつあります。
光は、測定中の破損が懸念される、ディスプレイ、電子機器、フィルムなどの製品に加え、ディーゼルエンジンのノズルのような、より丈夫なサンプルにも使用されています。光を使った測定には、環境に対する利点も数多くあります。
面の粗さの測定に関する日本工業規格(JIS)には2次元パラメーターしか規定されておらず、3次元パラメーターについての明確な規格は存在していません。3次元パラメーターの標準化に関する欧州の研究グループの作業が進行中であり、現在、3次元パラメーターをより広範囲に使用すること、および3次元解析に関する十分に信頼できる情報を提供することが必要であると考えられます。
最近の機械加工技術の進歩に伴い機械加工の精度も向上し続けているため、高精度の粗さ測定機器が求められています。現在では、極めて小さなスポット直径に集光したレーザー光線の光で表面粗さを測定できるレーザー顕微鏡が、垂直方向におけるナノメーターレベルの解像度を実現したことにより、線の評価ではなく、面の評価が測定評価の主流になりつつあります。我々は今、光を使用した高速面測定と全面測定で、良好な信頼性が得られる時代にいるのです。
柳和久博士は、長岡技術科学大学機械工学部、機械系の教授です。 柳和久教授のオリンパスLEXTレーザー走査型共焦点顕微鏡に関する著作
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