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超音波フェーズドアレイ チュートリアル - 目次

超音波フェーズドアレイ探傷装置の仕様


超音波フェーズドアレイ探傷装置は複数の振動素子を持つという特性から、従来型の超音波探傷装置には無い重要な仕様があります。こうした仕様についてはさらに詳細な検討、吟味が必要となります。

パルサー数: アクティブ開口幅またはバーチャルプローブ開口幅を形成するために、同時にグループ化が可能な振動素子の最大数を規定します。

レシーバー数: 開口幅全体にわたってシーケンスするために使用可能な振動素子の総数を規定します。この総数は一つのフェーズドアレイプローブの接触面でカバーできる検査範囲を潜在的に高めることにつながります。

XX:YY: XX=パルサー数、YY=レシーバー経路数を表す場合に用いられる慣習的呼称です。レシーバー数は常にパルサー数と同等かそれ以上になります。パルサー数とレシーバー数の組み合わせが16:16~32:128までの探傷装置は、屋外用ポータブルタイプの筐体で供給可能です。パルサー数、レシーバー数がこれより多い組み合わせの装置も販売されていますが、こうした装置は振動素子数の多いプローブが使われるインラインシステム用途などで利用されています。


フォーカルロウ: 通常、1画像を形成するために組み合わせ可能なフォーカルロウ数が明記されています。一般的に、XX:YY数が大きい構成になる程、より多くのフォーカルロウ数をサポートできるようになります。それは、リニアスキャン時により大きい開口幅を取ること、多くのフォーカルロウのステップを使用することを可能にするためです。ただしフォーカルロウ数の増加が必ずしも機能性の向上を意味しないことに注意して下さい。下の例では、64振動素子を持つフェーズドアレイプローブを用いてドリル加工した横穴に40°~70°の角度でセクタースキャンを行い、金属中のビーム路程長(50mm)にわたり1°ピッチ(30フォーカルロウ)、2°ピッチ(15フォーカルロウ)、4°ピッチ(7フォーカルロウ)の3設定の違いを比較しています。画像は角度の増え方が細かい方が若干鮮明になりますが、もっと粗い解像度でも検出は十分できます。ビーム径がフォーカシングにより劇的に小さくならない限り、画像による欠陥サイジングも劇的には向上しません。

下の例では、開口幅と総振動素子数の組み合わせを変化させてリニアスキャンを実行した際に必要となるフォーカルロウ数の例を紹介しています。


上の例から、16振動素子入りプローブと共に用いられる16:16の組み合わせでは、単に30フォーカルロウあれば十分(セクタースキャン・リニアスキャン両方とも)となるのに対して、リニアスキャン時に128振動素子入りプローブと共に使用される16:128、もしくは32:128の組み合わせでは128フォーカルロウを必要とすることが分かります。

PRF(パルス繰り返し周波数)/表示更新レート:探傷装置の表示更新レートは、さまざまな画像モードによって大きく異なります。超音波フェーズドアレイ画像モードの場合:



概念を説明するためフォーカルロウ数を4個に減らし、60Hzで画像表示更新するリニアスキャン・シーケンスの例が下で紹介されています。


実際の画像表示レートは他のパラメーターの影響を受けます。一つのフォーカルロウのA-スキャン更新レートは探傷装置により異なります。一部の探傷装置ではA-スキャンのPRFレートは最大画像表示更新レートによって制限されます。このことは、画像が超音波フェーズドアレイ画像で表示されようと、A-スキャン画面として表示されようと変わりありません。こうした理由から、一部のアプリケーションでは、さまざまな画像表示モードにおいてフォーカルロウ・シーケンスと関連するA-スキャンPRFを確認することが重要となります。


プローブ認識: フェーズドアレイプローブを自動認識する機能により、適切な振動素子数とプローブ形状で探傷装置のセットアップを自動設定することが可能となり、セットアップ時間を短縮します。

画像タイプ: 通常、セクタースキャンおよびリニアスキャンは、どの超音波フェーズドアレイ探傷装置でも可能です。これらの画像モードを積み重ねて振幅レベルもしくは深さデータによるC-スキャンの生成ができます。この平面画像(C-スキャン)の形成により、欠陥サイジングの広範な手段提供が可能となります。

波形保存: A-スキャン(PRF波形)の生データを保存できるので、検査後に超音波データを詳細に解析することが可能です。このことは広い検査範囲にわたってデータ収集を行う際に特に効果的です。


複数グループのサポート: 高性能な超音波フェーズドアレイ探傷装置の一部では、フェーズドアレイプローブを1個もしくは複数個接続して、複数のフォーカルロウ・グループをシーケンスすることができます。このことは検査後にオフラインで分析される体積データの収集が重要なケースでは特に有益です。例えば5MHz、64振動素子入りのフェーズドりアレイプローブをプログラム化し、振動素子の1-16番を使い40°~70°のセクタースキャンを行いつつ、第2グループとしては、16振動素子の同時励振を64振動素子全体にわたって1振動素子ずつ段階的にスライドさせる60°のリニアスキャンができます。

エンコード入力: 通常、探傷装置はマニュアルタイプとエンコーダー付きタイプの2種類が用意されています。

マニュアルタイプの超音波フェーズドアレイ探傷装置は、リアルタイムに超音波データを提供します。その意味で従来型の超音波探傷器と非常に似ています。超音波フェーズドアレイ探傷装置は、A-スキャンの他にセクタースキャンもしくはリニアスキャン画像をリアルタイムに表示できるので、きずの検出および分析に役立ちます。複数角度の斜角検査を一度に実施し断面画像表示できることが、このタイプの探傷装置を使用する主な利点の一つです。クラックの深さサイジングの手段としてこの断面画像を利用することも可能です。 


エンコーダー機能付きの超音波フェーズドアレイ探傷装置は、フェーズドアレイプローブの位置データ、プローブの形状(振動素子の配置)、そしてプログラム化されたフォーカルロウ・シーケンスの3要素を統合して、試験片の上面、断面、側面の各画像を提供します。すべてのA-スキャンの生データも保存する探傷装置では、画像を再構築することによりスキャンの全長にわたって断面ビューを提供したり、さまざまなレベルで平面C-スキャンを再生成したりすることができます。こうしたエンコード化された画像によって平面画像での欠陥サイジングが可能となります。

基準カーソル: 超音波フェーズドアレイ探傷装置には、画像上で欠陥を直接サイジングするために各種カーソルが備わっています。セクタースキャンの断面画像上では、カーソルを使用してクラックの高さ測定が可能です。同様に欠陥の概算サイズの測定はエンコード化されたリニアC-スキャンでも可能です。

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