この章では、超音波フェーズドアレイ画像がどの様に生成されるかについて詳しく説明します。特に、必要なインプット、実際のフェーズドアレイプローブおよび検査対象物に対するさまざまな超音波フェーズドアレイ表示形式の関係について詳述します。また、超音波フェーズドアレイ画像と共に利用されるA-スキャン画像についても説明します。
適切な検査を行う上で必要な検討事項
前の章で説明した様に、超音波探傷試験を適切に実施する上で確認すべき要素として、材料および探触子/プローブの特性があります。これらの要素は、適正な検査のために超音波探傷装置を校正する上で必要となります。
材料 :
探触子 :
ウエッジ :
従来型の超音波探傷試験では、適切な検査結果を得るために事前に上記の全ステップを踏む必要があります。一振動子型探触子の場合は、屈折角の測定、ゼロ点調整、および振幅校正という作業が探触子ごとに必要です。またウエッジ交換型の探触子の場合、ウエッジが変わるたびに新たに校正を実施する必要があります。また一振動子型探触子の場合、開口幅は固定されています
。
フェーズドアレイプローブを用いる際にも、上で述べたことと同じ原則に従う必要があります。超音波フェーズドアレイ検査の主な長所は、超音波ビームの開口幅、フォーカスおよび屈折角度をダイナミックに変更できることです。実質的には複数の一振動子型探触子を同時に使用することを意味しています。このことにより、校正およびセットアップ条件をフェーズドアレイプローブの各フォーカルロウ(各フォーカルロウを異なる一振動子型探触子とみなして校正)にまで適用できます。この結果、プログラム化されたフォーカルロウ・シーケンス全体を通して、振幅および深さの正確な測定が可能となるだけでなく、超音波フェーズドアレイ探傷装置による画像が正確かつ高精度なものとなります。
従来型の超音波探傷(UT)と超音波フェーズドアレイ検査(PA)の大きな相違は、斜角ビーム検査時に発生します。従来型の超音波探傷では、ウエッジ角度または材料音速のインプットが不適切であれば、検出した欠陥位置にエラーが発生します。しかし基本的な超音波伝播(およびその結果として得られるA-スキャン)はその影響を受けません。従来型の超音波探傷では機械的屈折(ウエッジの角度により固定)だけに依存しているからです。一方、超音波フェーズドアレイ検査では、フェーズドアレイプローブおよびウエッジパラメーターのインプットと共に、検査対象物とウエッジの材料音速をフォーカルロウに反映させる必要があります。こうして意図する屈折角にわたって電子的にステアリングを実行し、適切な画像を生成することが可能となります。高性能な超音波フェーズドアレイ探傷装置には、フェーズドアレイプローブ情報の自動認識機能を持つものがあり、装置本体にフェーズドアレイプローブを接続するとその情報を自動認識します。さらに、分かりやすく整理されたライブラリー機能を利用すれば、ウエッジパラメーターの選択が簡単に行えます。
超音波フェーズドアレイスキャンをプログラムするために、通常以下の値を入力します:
フェーズドアレイプローブのパラメーター:
周波数
帯域幅
サイズ
振動素子数
振動素子のピッチ
ウエッジのパラメーター:
ウエッジの角度
ウエッジの音速
オフセット Z=1番目の振動素子の中心までの高さ
インデックスオフセット X=ウエッジ前面から1番目の振動素子までの距離
スキャンオフセット Y=ウエッジ側面から振動素子群の中心までの距離
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フォーカルロウ設定(リニアスキャン)>>