・A-スキャン: 日本ではAスコープとも呼ばれている。受信した超音波パルス信号を振幅(振幅軸)と伝播時間(時間軸)の関係を示す波形として表示。信号のピークは、反射源や不連続部からの反射エコーを示す。整流(全波、半波+、半波-)される場合と未整流(RF波形)の場合とがある。
・ アポディゼイション: 不要のサイドローブの振幅を減少させるために、アレイの外側の振動素子に対して他より低い励起電圧を印加するコンピュータ-制御機能。
・アパーチャー(開口幅): 超音波フェーズドアレイ検査において、信号発信のタイミングが同時に制御されるフェーズドアレイプローブの振動素子幅または振動素子グループ(振動素子数)。
・アジマサルスキャン: セクタースキャンの別名。フェーズドアレイプローブの各フォーカルロウごとに超音波ビームの屈折角やフォーカス点の設定が行われており、それぞれの超音波ビームの信号振幅と伝搬時間(または深さ)に関する超音波データから扇形状の二次元ビューを生成。
・ B-スキャン: 日本ではBスコープとも呼ばれている。超音波探触子でスキャンした位置情報と超音波ビーム方向に対するエコー源の深さ、もしくは距離の情報(A-スキャンデータ)により表示される二次元画面。B-スキャンには単一値タイプと断面タイプがある。
・単一値によるB-スキャン: A-スキャン上に設定したゲート内の一番目、もしくは最大ピークのエコー源をプロットし、それを基に生成した二次元画像。この画像形式は、一般的に超音波探傷器や最新の超音波厚さ計に使用されているが、各データポイントごとに一つのエコー源を表示。
・断面図を生成するB-スキャン: 各データポイントのA-スキャンデータに基づいて生成される超音波データの二次元画像。A-スキャン上に描かれた波形の振幅値レベルを色階調としてプロットする。こうして試料内の近表面および遠表面にあるエコー源の表示が可能。
・帯域幅: 特定の振幅レベル限度内の周波数応答域。ここで注目すべきは典型的な探触子は純粋な単一周波数ではなく、むしろ公称周波数を中心としてある周波数領域にわたって音波を発生するという点である。工業用規格ではこの帯域幅を-6dB(ピーク振幅の半分)ポイントと指定。一般的に、帯域幅が広くなると近表面および時間軸の解像力は向上し、逆に帯域幅が狭くなるとエネルギー出力が増し、その結果感度も増す。
・ ビーム形成: 超音波フェーズドアレイ検査において、フェーズドアレイプローブの各振動素子を励振するタイミングを電子制御することにより、特定の位置、屈折角や焦点を持つ超音波ビームを生成すること。
・指向角: 遠距離音場での音波ビームの中心ラインからの拡散角度。
・ビームステアリング: フェーズドアレイプローブにより生成された超音波ビームの屈折角を変化させること。
・ウエッジ遅延の校正: ウエッジ内を通過する超音波ビームのそれぞれのビーム路程を電子的に調整する方法。エコー源までのビーム路程の測定を適正にするために用いられる。
・ 感度の校正: 超音波フェーズドアレイによる電子スキャン時に、全ビーム成分にわたって信号振幅レベルを電子的に均一にする方法。通常は、振動素子間の感度ばらつきや異なる屈折角でのエネルギー伝搬のばらつきを調整する。
C-スキャン: 超音波の振幅または時間/深さデータの二次元ビュー。 試験片の上面ビューとして表示される。
・遠距離音場: 最大音圧を示した点(近距離音場限界点)から超えた部分のビーム路程。ビームスプレッド(拡散)はこの遠距離音場で発生する。
・フォーカルロウ: プログラム化された時間遅延パターン。時間遅延はフェーズドアレイプローブの個々の振動素子からのパルス信号の発信、受信に適用され、その結果発生する超音波ビームのステアリング、フォーカシングを実行し、エコー受信を正しく行う。
・フォーカスポイント: 超音波において、音波ビームが集束して最小径になり音圧が極大になる点。この点を超えるとビームは拡散する。
・グレーティングローブ: 超音波ビームの音圧分布において中心軸の側面に拡散する疑似成分。プローブ振動素子全体にわたる規則正しい励振により発生する。グレーティングローブはフェーズドアレイプローブだけに発生する。それは規則的かつ周期的に配置された小さな振動素子からの音波(ビーム)成分による。サイドローブも要参照。
・サイドローブ: 超音波ビームの音圧分布において中心軸の側面に拡散する疑似成分。メインローブの角度とは異なる角度で探触子の振動子から音圧が漏れることにより発生する。サイドローブはすべての探触子から発生する。グレーティングローブ要参照。
・ホイヘンスの原理: 波動の数学的モデル。進行波面の各点は新たな球面波を発生させる点源として考えられ、その結果、発生する統一波面はこれら個々の球面波の合計である。
・ リニアスキャン: 超音波ビームを機械的な移動ではなく、アレイ状に並んだ振動素子の配列に沿って動かす走査法。
・近距離音場: 探触子に近い領域で音圧が一連の上下限を繰り返し、最大音圧を示した点(近距離音場限界点と呼ぶ)で終わる。探触子はこの近距離音場においてのみ集束する。
・ フェーズドアレイプローブ(探触子): 複数の振動素子を持った超音波探触子。各振動素子の励振タイミングを段階的にずらして信号発信および受信することで、ビームの生成やビームステアリングを行う。オリンパスのフェーズドアレイプローブは、通常16個、32個、64個、128個のいずれかの振動素子を持つ。
・位相合成(phasing): 同一周波数で異なる時間遅延を持つ2個以上の波の相互作用。強め合い、または弱め合いの干渉を起こす。
・ ピッチ: フェーズドアレイプローブの各振動素子間の距離。
・アクティブ面: 複数の振動素子を持つフェーズドアレイプローブから超音波ビームを電子的にスキャンする方向と平行な面。
・ パッシブ面: 各プローブ振動素子の高さ、またはプローブ幅と平行な方向の面(超音波の拡がり方は一振動子型探触子と同様となる面)。
・ステアリング面: フェーズドアレイプローブにとって、ビーム方向を変更することが可能な方向(リニア・アレイ型の場合は、アクティブ面と同義)。
・ パルス持続時間: 正および負の最大振幅から-20dBのカットオフに至るまでの波形継続時間。通常、帯域幅が広くなるとパルス持続時間は減少し、逆に狭くなると継続時間は増加する。パルス持続時間はパルサーの設定に大きく依存する。
・角度分解能: 超音波フェーズドアレイ探傷装置において、角度分解能は同じ深さ位置の隣接した欠陥を分解できる、二つのA-スキャン間の最小角度のこと。
・ アキシャル分解能(UT軸): 各エコー源を識別可能な二つの特定エコー源間の最小深さ距離。一般的には周波数が高く、帯域幅が広くなるほどアキシャル分解能は高まる。
・遠距離分解能: 試験片の底面上の1mm~5mmの位置にある特定の反射源(SDHまたはFBH)を十分な振幅(6dB以上)で分解できる、底面から反射源までの最小距離。一般的には、反射源が識別可能な底面からの最小距離を指す。
・ラテラル分解能(横方向): 超音波フェーズドアレイ探傷装置において、各エコー源を識別可能な二つの特定エコー源間の最小の横距離。ラテラル分解能はフェーズドアレイプローブの設計とフォーカルロウのプログラミングの設定に関係する。
・近距離分解能: 反射源(SDH、FBH)からの振幅が6dB以上の分解能をもつ音波入射面からの最小距離。一般的には、反射源が識別可能な音波入射面からの最小距離を指す。この点より上のエリアは不感帯として知られ、一般的にゲインが増大するのに伴い不感帯も増大する。
・シーケンス: あらかじめ定められた順序または手続きに従って各段階を逐次進めていく制御のこと。
・ セクタースキャン(S-スキャン): フェーズドアレイプローブの各フォーカルロウごとに超音波ビームの屈折角やフォーカス点の設定が行われており、それぞれの超音波ビームの信号振幅と伝搬時間(または深さ)に関する超音波データから扇形状の二次元ビューを生成するもの。
・ バーチャルアパーチャー(開口幅全体): 発信のタイミングが同時制御されるフェーズドアレイ振動素子のグループ(集合体)を合計した幅。