斜角セクタースキャンの場合、エコー源の判読は一層複雑になります。試験体の底面および上面のコーナー部などからの複数のレグ信号として反射した可能性があるためです。1番目のレグ(試験片の底面から最初に反射した部分までのビーム路程)では、表示は試験片の単純な断面像になります。
しかし従来型の超音波探傷器を使用する場合も同様ですが、1番目のレグから先の表示は一層慎重な判読が要求されます。
斜角探触子を使った従来型の超音波探傷器では、固定角度のA-スキャンを表示します。最近のデジタル超音波探傷器はビーム路程の測定値および事前に設定した検査対象物の厚さ値を用いて三角関数によりエコー源の深さと表面距離を計算します。5MHzの探触子と屈折角45°のウエッジを用いた下の例で見られる様に、試験片の形状により直射および1回反射の反射エコーを同時に画面上に生成します。ビームはその一部が底面の切り込み(ノッチ)から反射し、一部は上方方向に反射し、それからブロックの左上コーナー部から反射します。レグ数の表示および距離の計算結果を利用しエコー源の位置を確認することが可能です。
この直射領域(1番目のレグ)でのエコー信号は試験片の底面の切り込み(ノッチ)からの大きな反射エコーです。深さ表示(ディスプレイ画面の左上)は厚さ25mmの試験片底面に対応する値を示し、レグ数の表示(ディスプレイ画面の右下)はそれが直射領域(1番目のレグ)での反射エコーであることを示しています。
1回反射領域(2番目のレグ)でのエコー信号はブロック上面コーナー部からの小さな反射エコーです。深さ表示は厚さ25mmブロックの上面に対応する値を示し、レグ数の表示はそれが1回反射領域での反射エコーであることを示しています。(深さと表面距離の測定値がそれぞれ理論値の0mmと50mmから若干誤差があるのはビームの指向角の影響によるものです。)
上記と同じ検査を、5MHzのフェーズドアレイプローブで、40°~70°の屈折角範囲を斜角セクタースキャンした場合の断面像を表示します。付随するA-スキャンは選択された角度成分のものです。ビーム路程の測定値および事前に設定した検査対象物の厚さを利用して三角関数によりそれぞれの角度成分でのエコー源の深さと表面距離を計算します。このタイプの検査では、単一角度成分で複数エコー源を検出する可能性の他にも、同一エコー源からのエコー信号を直射領域(1番目のレグ)と1回反射領域(2番目のレグ)で同時に表示する可能性があります。水平ラインのレグ境界表示はA-スキャン波形および画像上に投影されスクリーンを直射領域(1番目のレグ)、1回反射領域(2番目のレグ)、そして3番目のレグ領域に分割します。一方、測定値インジケーターに表示される距離の計算結果はエコー源の位置確認を助けます。
この例ではフェーズドアレイプローブを移動させることなく三つのエコー信号を40°~70°の扇型形状の断面画像で検出しています。
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