従来型超音波の一振動子型探触子(縦波)は、高周波の機械的振動源として機能します。電圧をかける(印加)と圧電セラミック(しばしばピエゾ結晶と呼ばれる)は、振動子面と垂直な方向に圧縮することで変形します。電圧印加を止めると通常マイクロ秒(1/100万)内で圧電セラミックは元の形に復元し、機械的エネルギーである超音波パルスを発生します。下図は一例として圧電セラミックが短い電気パルスに反応する仕組みを概念的に説明したものです。
超音波非破壊検査で最も一般的に使用されている振動子は以下のような基本的な機能特性を持っています:
タイプ -
探触子はその機能により、直接接触型、遅延材型、水浸型の大きく3タイプに分類されます。探触子のタイプの選択には試料特性、具体的には試料の厚さ、検査速度、表面の粗さ、温度、アクセス性などが影響を与えます。
径 - 有効振動子の直径を指します。探触子のケースは、通常、振動子よりやや大きいサイズとなります。
周波数 -
1秒間に完了する波サイクル数を指します。通常キロヘルツ(kHz)またはメガヘルツ(MHz)で表します。産業用超音波試験の殆どが、500kHz~20MHzの周波数帯域で行われており、大部分の探触子はこの帯域のものです。しかし、販売されている探触子には500kHz以下のものや20MHz以上のものもあります。なかには50kHz以下のものや200MHz以上のものまであります。低周波数になるほど透過性が増し、高周波数になるほど分解能と指向性が増す関係にあります。
帯域幅(バンド幅) -
特定の振幅限度内の周波数応答域を指します。これに関連して注意すべきことは、典型的な非破壊検査用探触子は純粋な単一周波数の音波ではなく、むしろ公称周波数を中心に、ある周波数領域にわたって音波を発生するということです。工業用規格はこの帯域幅を-6dB(ピーク振幅の半分)ポイントと指定しています。
パルスサイクル数(Waveform duration) -
探触子がパルス発信する毎に生成する波サイクル数を指します。狭帯域幅の探触子は広帯域幅のものよりサイクル数が多くなります。振動子径、バッキング材、電気同調、探触子の励振方法の全てがパルスサイクル数に影響を与えます。
感度 - 励起パルス振幅と設定したターゲットから受信したエコー振幅の関係を指します。
大まかにはいうと、典型的なフラット・タイプの探触子のビームは、有効振動子径を源として発生したエネルギーが柱状に広がったものとして考えられています。その形状は徐々に径を増し、最終的には消散します。
ところが実際のビーム形状は複雑で、音圧勾配は横軸、縦軸の両方向にあります。下のビーム形状では、赤い部分がエネルギーの最も高い部分を表し、グリーンとブルーの部分はエネルギーが相対的に低い部分を表しています。
探触子の音場は近距離音場と遠距離音場に分かれます。近距離音場は探触子に近い領域を指します。近距離音場は音圧が一連の上下限を繰り返し、最大音圧を示した点(近距離音場限界点と呼ぶ)で終わります。ビーム端から近距離音場限界点までの長さは近距離音場限界距離(N)と呼びますが、近距離音場限界距離内では探触子が生成する自然なビーム集束が表われます。
遠距離音場は近距離音場限界点を超えた領域を指します。遠距離音場ではビーム径が拡大しエネルギーが消散します。これに伴い音圧も徐々に低下し最終的にはゼロになります。
近距離音場限界距離(N)は探触子の周波数、径、および試料の音速の関数であり、以下のように計算されます:
近距離音場内では音圧のばらつきのため、振幅をベースとした方法では欠陥を正確に評価することは難しいといえます(近距離音場内での厚さ計測は問題ありません)。さらに、近距離音場限界点は探触子ビームが音響レンズまたは位相整合技術を利用して、焦点を結ぶ最大距離を表します。フォーカシングについては2.14.項で述べます。
正方形および長方形タイプの振動子の幅と高さの比に基づく比例定数(k)は以下のとおりです:
Ratio short/long | k |
1.0 | 1.37 (square element) |
0.9 | 1.25 |
0.8 | 1.15 |
0.7 | 1.09 |
0.6 | 1.04 |
0.5 | 1.01 |
0.4 | 1.00 |
0.3 and below | 0.99 |
円型振動子の場合、kは使用せず、振動子の幅と高さの関係の代わりに振動子径(D)を使用します。