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超音波フェーズドアレイ チュートリアル - 目次

位相制御した送信波とその効果

2個またはそれ以上の波源から発生した波が相互に影響し合う場合は、常に位相作用により波が合成する点で波エネルギーが増加または減少します。同一周波数の弾性波はその変位が正確に同調した場合(同相もしくは位相角がゼロ度の場合)、波エネルギーは相互に強め合い、より大きな振幅波を生成します。仮にその変位が全く逆の場合(180°位相の場合)、波エネルギーは相互に打ち消し合います。位相角が0°と180°の間にある場合は、100%波が重なり合う場合と100%打ち消し合う場合の中間の状態になります。多数の波源から発生した波のタイミングを変化させることによって、波動干渉作用を利用して合成波面のステアリングおよびフォーカシングが可能となります。これが超音波フェーズドアレイ検査を支えている最も重要な理論です。

従来型の超音波探触子では、波動干渉の強め合いと弱め合いの作用により近距離音場と遠距離音場を生成し、さらにその音場の中に多様な音圧勾配を生成します。加えて、従来型斜角探触子は一振動子によりもウエッジの中に波を発生させます。波面を形成するそれぞれのポイントには、ウエッジの形状により遅延間隔に差が生じます。こうした遅延は機械的遅延で、超音波フェーズドアレイ検査で採用されている電子的遅延と相対立するものです。波面がウエッジ底面を打ったとき、その波面はホイヘンスの原理により一連の点波源として視覚的に認識されます。各点波源から届いた理論的球形波は相互に作用し合い、スネルの法則により導かれた角度で単一波を生成することになります。

一方、超音波フェーズドアレイ検査では、位相整合によって予め計算した波動干渉の強め合いと弱め合い作用を発生させ、その作用を利用して超音波ビームの生成とステアリングを行います。個々の振動素子または素子グループの発信タイミングをさまざまに遅延させることにより一連の点波源を生成し、その点波源が単一波面を合成します。単一波面は選択された角度で伝播します。この電子的な波動作用は従来型斜角探触子のウエッジが生成した機械的遅延と似ていますが、電子的作用の場合は遅延パターンを変えることによりさらにステアリング性能を高めることができます。この合成波の振幅は、波動干渉の強め合い作用によって、元の個々の波の振幅に比べ非常に大きくなります。同様に、アレイの各振動素子が受信したエコーに対して可変遅延処理を行い、エコー応答波を合計します。その際、エコー応答波がビーム全成分中の単一角度成分、焦点成分の双方またはどちらか一方を代表する方法で合計(合成)を行います。この個々のビーム成分の合成の結果、生成された波面の方向変更の他に、近距離音場のどの点に置いてもビーム・フォーカシングが可能となります。

開口幅を大きくすることにより有効感度を高めるために、振動素子は通常は4~32のグループ単位で発信タイミングを制御し、それにより不要な指向角を減少させ、かつ一層シャープなフォーカシングが可能と成ります。

戻ってきたエコーを各種の振動素子または振動素子グループで受け、さらにさまざまなウエッジ遅延を補正するために必要に応じて受信タイミングの補正を行い、それから合計します。従来型一振動子探触子では探触子面に当るビーム全成分の作用を事実上合成してしまいます。一方、フェーズドアレイプローブは従来型とは異なり、各振動素子におけるビーム到着時間と振幅に応じて、戻ってくる波面を空間上で選別できます。各フォーカルロウ(各ビームを生成するための制御プログラムおよびその生成ビーム)は、装置のソフトウェアで処理された場合、ビーム中の特定角度成分、リニア・パス上の特定ポイントと特定焦点深度の双方または一方からの反射を表しています。エコー情報はいくつかの標準的フォーマットで表示することができます。

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