背景:
ディッパーハンドルは、露天採掘で使用する多くのシャベルやドラグラインの重要な構成要素です。このハンドルとブームが連動することによって、ディッパーバスケットの上昇/下降動作が可能になります。ディッパーハンドルの動作不良は安全上の問題を引き起こすばかりではなく、全体としての機械の稼働率低下を招きますから経済的な損失にもつながります。したがって、ディッパーハンドルに関連する部品の検査と修理の効率化は非常に重要な問題です。
ボックスタイプのディッパーハンドルの多くは矩形の形状を持ち、バルクヘッド支持構造を含んでいます。この支持構造体は強度を強めるため、ディッパーハンドルに隅肉溶接されています。しかし、このような設計により作り出される構造は往々にして、溶接部や側壁に割れが発見されたときに修理が難しいという問題を抱えています。多くの場合、割れを修理するために欠陥箇所へアクセスするためには、側面フレームに窓穴を開ける必要が生じることがよくあります。
いったん修理を始めると複雑な作業が必要となり時間を要することから、検査の迅速性と正確さは非常に重要です。少なくとも2つの表面から検査を行うのが、隅肉溶接(T字溶接)の望ましい検査法です。しかし、ディッパーハンドルの場合は、1つの表面だけを除いて、残りの全表面領域が外部の構造材で囲まれていますから、この方法を適用することは不可能です。隅肉溶接に発生する割れの多くは溶接の先端部から起こり、それが側壁へ延びる傾向を示します。
ディッパーハンドル隅肉溶接の模式図。溶接割れ修理のために穴(アクセス窓)が作られていることに注意。
解決策: 超音波フェーズドアレイ探傷 vs. 従来型超音波探傷
手動式の超音波フェーズドアレイ探傷器を使用する場合は、まずプローブで溶接領域の内側と外側を走査し、続いて実際の溶接箇所へと下りていきます。超音波フェーズドアレイ探傷器を使用する利点は、複数の角度を使用できることと、探傷器のディスプレイに画像を表示できることです。
その一方、従来型の超音波探傷法を用いる探傷器では、溶接箇所または側壁における割れの形状を判読し難いという問題があります。従来法による探傷器を使用して1回の測定で作成できるのは、隅肉溶接を1つの角度から見た画像だけです。その上、検知できるのは設定した角度に対して垂直方向の割れに限られています。角度を変えた複数のプローブを使用すれば、割れや他のきずを検出できる確率を向上させることは可能ですが、この方法には非常に長い時間を必要とします。
要約:超音波フェーズドアレイ法の利点
- 50%以上の時間短縮が可能: 後退スキャンの移動距離短縮。より迅速な欠陥評価。角度の異なる複数のプローブを使用することなく、単一プローブでの測定
- 複数の角度を使用することにより検出確率が向上
- 画像から形状を判別可能であることから、誤った判断を下す可能性が低い
- 適切な処置のためにデータをレビューしたり検討したりする際の助けとなる全ての生データと共に、画像(S-スキャン)データファイルを保存可能
使用機器
- OmniScanまたはEPOCHシリーズの超音波フェーズドアレイ探傷器(ここで使用されるのはEPOCH 1000iとOmniScan SX)
- 16以上の素子を実装したフェーズドアレイプローブ
- 横波用フェーズドアレイウエッジ
- 接触媒質
おわりに:
ディッパーハンドルの検査は建設機械にとっての重要問題ですが、これを従来からの超音波探傷法で実施しようとすると溶接部へのアクセスや形状の問題など、従来の超音波探傷法が抱える本質的制約のために多くの困難が伴います。しかし、超音波フェーズドアレイ探傷器を使用して検査を行うことにより、時間の節約ばかりでなく、検出率と精度の向上、評価速度の向上など多くのメリットが得られます。
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