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フェーズドアレイによる、大型トラックのホイール・ハブの検査


Mining Haul Truck Wheel Hub Inspection Using Phased Array

要約

銅や石炭、その他の鉱物資源を運搬するトラックを正常かつ安全に運用するためには厳重なメンテナンスが必要です。採掘の現場では、積載重量が400トンにも達する大型トラックを長い期間にわたって円滑に稼働させなければなりません。運用中、ホイールは常に強い応力に曝されます。このホイールを車体に取り付けて保持するホイールハブは運搬トラックの性能を左右する重要な構成部品です。ホイール部が故障すると重大事故の原因となるばかりでなく、多額の修理費用が発生します。

多くの場合、ホイールハブはダクタイル鋳鉄で作られています。ホイールハブの内部には、鋳造による製造プロセスの過程で発生した微細な空隙や異物混入などの不均一箇所が存在する可能性があります。このような箇所が検出されずに残ってしまうと、やがては応力に耐えられずに割れや欠陥発生の原因になります。また、製造プロセスの一部が最後まで完全に処理されないと割れを発生させることがあります。特に起こりやすいのは湾曲部分や厚みが変化する箇所です。このような箇所に日常的に強い応力が加えられることによって割れが発生します。さらに、通常の運用規定の範囲を超えた応力を加えると割れ発生の原因になります。しかし、形状が特殊であるため、このような箇所は一般に検査が困難です。表面に露出した割れの検出では非破壊検査法の一種である染色浸透法が多く使用されますが、内部に隠れた空隙や介在物、割れなどの検出には難しいのが実情です。

染色浸透法の問題点:

  • 検出できるのは一部が表面に露出した空隙や割れだけ
  • 検査前後に大がかりな洗浄や予備作業(塗膜剥離など)が必要
  • 厳重な管理を必要とする化学製品を使用
  • 保存できる記録は割れの写真のみ

従来型超音波検査法の問題点:

  • 幾何形状を考慮しなければならないため、A-スキャンの解釈が難しい
  • 1つの方向(角度)を選択して検査箇所へアクセスしなければならない
  • 角度に垂直でない欠陥の検出感度が落ちる。特に、割れは様々な方向に走るため、反射された音波信号が十分に探触子に達しないことや部品の形状によって阻害される可能性がある
  • データを保存できない場合があるため、A-スキャンをもとに検査担当者が現場で判断しなければならない

超音波フェーズドアレイ法

マニュアル操作タイプの超音波フェーズドアレイ探傷器を使用すれば、他の欠陥部品や技術データにより問題箇所を推定して、アクセス可能な最適表面を選択して検査することができます。フェーズドアレイプローブは複数の角度へ音波ビームを同時発信できるという特長があり、さらにプログラム設定が可能なため、非常に柔軟性があります。この特長を活かして、従来型超音波探傷よりも鋳造物のより広い面積を検査することができます。さらに、染色浸透法では検出できない空間的に広がりのある欠陥も検出可能です。状況によってはプローブを接触させる位置が限定されるかもしれませんが、同時に複数の角度へ音波を送信するので、プローブ位置から反対方向へ配向した欠陥であっても検出が可能です。また、欠陥の位置や特徴を正しく判断できる可能性も高くなります。発射角を横断的に把握できる画像を利用して、欠陥の幾何学的形状を解釈することができます。

Cross section of Wheel Hub and Access Areas with Conventional Ultrasonics and Phased Array to Inspect Radius
ホイールハブ断面: 従来型超音波法と超音波フェーズドアレイ法で湾曲部を検査する場合のアクセス領域比較

Surface Breaking Crack in Radius of Wheel Hub
ホイールハブ湾曲部の表面に露出した破断

Volumetric (Internal) inclusion or void found in Wheel Hub
ホイールハブ内部に隠れた、空間的に広がりのある介在物/空隙

Area of Larger Grain and Area of Smaller Grain Structure found in Cast Wheel HubArea of Larger Grain and Area of Smaller Grain Structure found in Cast Wheel Hub

鋳造ホイールハブに見られる粒状組織領域(左:粗い粒子 右:細い粒子)

超音波フェーズドアレイ法の利点のまとめ:

  • 他の手法よりもプローブ設置面積とセットアップが少なくてすみ、内部に隠れた欠陥と表面に露出した欠陥の両方を検出することができるので、時間の節約にも繋がります。
  • 広がりのある角度範囲を使用して、検出率が向上します。
  • 画像から幾何学情報が得られるので、誤判定の減少に繋がります。
  • 欠陥情報(S-スキャン)と生データをファイルとして保存可能なため、詳細な見直しと検討が正しい判定に導きます。
  • 鋳鉄物の検査範囲を拡げることが可能です。
  • 製造過程や応力に起因する欠陥ばかりでなく、結晶粒度などの物性情報が得ることができます。
  • 管理を必要とする危険な化学製品を使用しません。
  • 染色浸透法とは異なり、測定表面の予備処理が不要で、固着した塗膜が残っていても測定可能です。

使用機器

  • 超音波フェーズドアレイ探傷器( 最も一般的に使用されるのは EPOCH 1000iまたはOmniScan SX
  • フェーズドアレイプローブ(16個以上の振動素子)
  • 横波用フェーズドアレイウエッジ
  • 接触媒質

結論

ホイールハブは大重量運搬トラックや、その他の重機の性能を左右する重要なコンポーネントです。採掘現場や運送中に故障を起こすと多大な費用が発生するばかりでなく、安全面からも重大な問題が起こります。超音波フェーズドアレイ探傷は、このような鋳造部品を製造段階または現場での運用中に検査する優れたツールです。特に、マニュアルで操作できるポータブルユニットは重要箇所の検査に最適な装置です。プログラム設定を簡単に変更できるので、その都度ユニットを交換する必要がありません。コンパクトなフェーズドアレイプローブは検査のための広いプローブ設置面積を必要とすることなく、広範囲な検査領域をカバーすることができます。

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