背景
稼働中のタービン部品は、大きな機械応力、蒸気やガスによる腐食などを含む非常に過酷な使用条件にさらされます。そして、万一、タービン部品に不具合が発生すると大惨事につながる可能性があります。
渦流アレイ検査はデータ記録が可能で、検査の信頼性と速度向上という利点があります。さらに、新たに導入されたフレキシブルプリント基板(PCB)型渦流アレイプローブにより、これまでとは異なる形状の部品にも適用が可能となりました。しかし、多くの場合、エッジ効果による制限はそのまま残っています。オリンパスはフレキシブルプリント基板(PCB)型渦流アレイプローブを遮蔽する方法を開発し、これによってエッジ効果の劇的な削減に成功しました。
タービンのダブテールスロットやブレードの付け根のような部品では、亀裂発生の危険性があるゾーンの一つが部品のエッジ付近に存在します。しかし、部品のエッジ部分からの応答信号は非常に強力なので、そうした亀裂発生の危険ゾーン内に欠陥があったとしても、その欠陥からの応答信号は隠されてしまいます。エッジ効果と呼ばれるこの現象は渦流検査ではよく知られています。遮蔽された渦流コイルは
磁場探傷においては長年有効で、エッジ効果による不感帯ゾーンを減らしていましたが、フレキシブルプリント基板(PCB)型渦流アレイと同様の効果を得る方法は最近までありませんでした。
装置
検査に使用する装置は、以下のアイテムで構成されています:
- OmniScan MX ECA
- 遮蔽付きフレキシブルプリント基板(PCB)型渦流アレイプローブ
- 64素子MUX
- エンコーダー
- アプリケーションに適合するホルダー
検査用設定
フレキシブルプリント基板(PCB)型渦流アレイプローブの詳細:
- チャンネル数:64
- コイルタイプ:アブソリュート、ブリッジ(プローブ上に基準コイル装着)
- 探傷領域:76.8mm
- 分解能:1.2mm
- 矩形(3 x 2.2mm)、アクティブ・シールド機能付き
- プローブ設計:探傷領域最適化のために3列のコイルを実装
このプローブは、弊社のカタログには載っていない特殊タイプです。特注生産となりますので、お客様のアプリケーションへの適応可否につきましては、お近くのオリンパスまでお問い合わせください。
標準的な手順例
このプローブの特長を活かす設定法が確立されています。タービンブレードの付け根を表すサンプルに機械加工でEDMノッチ(0.8mm x
0.4mm)を作ります。一つのノッチはエッジから1mmの位置にあり、それ以外の複数のノッチは横断面の何カ所かの異なる位置に配置されています(図1)。
ラピッドプロトタイピングマシンを使用して、サンプルの形状に一致するカスタムプローブホルダーを作成します(図2)。次に、プローブ(図3)をホルダーに装着し、エンコーダーを組立部品に取り付けます(図4)。あとはECAプローブで1回スキャンするだけです(図5)。
図 1:タービン部品のモックアップ図
図 2:ラピッドプロトタイピングマシンで作成したホルダー
図 3:フレキシブルプリント基板(PCB)製の渦流アレイプローブ
図 4:組立品
図 5:部品を1回のスキャンだけで検査可能
結果
検査結果はC-スキャン方式の画像で表示されます。エッジに彫られたノッチ(左側)が明瞭に検出されており、エッジ効果による信号からうまく分離されています。図から分かるとおり、エッジの影響で生ずる不感帯は1mm未満の大きさに過ぎません。また、エッジから離れた位置に作られたノッチもうまく検出されています。特に注意すべきは、検出振幅がよく似ていることです。したがって、このプローブは、類似した欠陥ならばエッジからの距離に依らずに同じような振幅で検出します。
タービン部品のC-スキャン表示
エッジ近傍のノッチ周りを拡大表示
結論
遮蔽付きフレキシブルプリント基板(PCB)型渦流アレイプローブを使用することで、複雑な形状の様々な部品の検査が可能になります。このプローブはエッジ効果を低減する効果を持ち、その効果によってエッジ近傍のノッチが明瞭に検出されます。 また、タービン部品の表面全体にわたって、ノッチを高い信頼性で高精度に検出することができます。