溶接部の欠陥を確実に検出することが、オイル/ガス・石油化学業界など、大規模な溶接を用いる多くの業界で課題となっています。 異種溶接材料とステンレス鋼の溶接は、さらに検査が難しくなります。 特に融合不良の欠陥は、検出が困難な場合があります。
溶接の非破壊検査における現在の代表的な方法は放射線検査ですが、 放射線検査で使用される有害なX線には安全性に関する懸念があり、検査での使用に制限もあります。 超音波検査は、電離放射線ではなく音波を使用しており、迅速かつ確実で安全に、作業を中断することなく欠陥を検出できるため、正しくセットアップされた超音波検査であれば、これらの制限事項に対応できます。
現在の代表的な方法である放射線検査は、検査対象物の反対側にある検出器に向けて、金属内を伝播する高エネルギー光子を利用した検査法です。 構成材内に不規則な部分があると、溶接内、母材内、接合部のいずれであっても、その領域は検出器上で他の箇所より明るいまたは暗い領域として現れます。 放射線検査の使用における主な制限事項は、放射線を使うことによる有害な影響です。 高エネルギーのX線により人の健康に対して多くのリスクが生じるため、放射線への曝露を避けるための安全策が必要です。 通常は検査対象の近辺の広いエリアから人を避難させる必要があり、検査エリアでの作業が中断されます。 検出率が、溶接検査の方法を選択する際の1つの因子となる場合があります。 放射線検査を使用すると、融合不良などの欠陥におけるコントラストが低くなる可能性があるというデータ1があります。 これは、ステンレス鋼や異種材料間溶接において、こうした欠陥の検出率が低下することを意味しています。 | 図2:融合不良 |
放射線検査におけるもう一つの大きな欠点として、構成材の検査にかかる時間があります。 長い露光時間により検査時間が長くなり、そのエリアでの作業が長時間にわたって中断する場合があります。 長いX線露光時間が必要な場合は、より短時間で検査できる方法に切り替えることにより、検査員が費やす時間、最低限の中断など、さまざまな面で経費を節減できます。
溶接検査での探傷においてもう一つの選択肢となる技法が、超音波検査です。 オリンパスのOmniScan MX2(図3)などの超音波探傷器は、放射線ではなく音波を使用して構成材を検査します。 検出は、構成材内の接合部分における音波の偏向に基づいて行われます。 検出率を最大限に上げるために、そして画像化とセクタースキャンを可能にするために、超音波フェイズドアレイプローブを使用できます。 フェイズドアレイとは? | 図3:オリンパスOmniScan MX2 |
ピッチキャッチ検査は、従来の一振動子プローブを使用しても、各探触子に複数の振動子が含まれるフェイズドアレイプローブ(デュアルマトリックスアレイ(DMA)プローブとも呼ばれます(図5))を使用しても実施できます。 フェイズドアレイ検査では、探傷器が各振動子を個別に制御します。
フェイズドアレイの長所として、画像化機能やセクタースキャン、プローブを往復させることなく簡単に溶接部を検査範囲に入れられることが挙げられます。 これらの機能が、超音波ビームに対するより優れた制御と組み合わされることで、検査が簡単になり、検出率が向上します。
超音波検査には、特に難しいタイプの溶接材料で使用する場合に、放射線検査と比べて大きな利点があります。電離放射線を必要としないため、安全性が向上し、作業の中断を避けることができます。 検査が高速化され、見つけにくい特定の欠陥に対する検出率も高くなります。 オリンパスのOmniScan MX2フェイズドアレイ探傷器などの超音波検査機器は、こうした利点があることで、迅速性、安全性、高い検出率が求められる大規模な溶接検査に非常に適しています。
詳細については、総合的なホワイトペーパー(www.olympus-ims.com/en/easy-ultrasonic-phased-array-inspection-ofcorrosion- resistant-alloys-and-dissimilar-weld-materials/)をお読みください。 このホワイトペーパーには、可能な限り最良の検査結果が得られるように、超音波検査を正しくセットアップするために検討すべきさまざまなパラメーターについてのアドバイスが記載されています。
1英国健康安全局の報告書(www.hse.gov.uk/research/rrpdf/rr301.pdf)
著者
Thierry Couturier
製品とアプリケーションのシニアスペシャリスト:超音波およびフェイズドアレイ
科学ソリューション部門
OLYMPUS EUROPA SE CO. KG