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事例・お役立ち資料

渦流プローブおよびアプリケーションガイド

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イントロダクション

本書は、ユーザーが特定の検査に適した渦流プローブを選択する際の有用な情報を提供するものです。ここに記載されているデータを利用すると、周波数を最適化して適切な探傷器を選択することができ、最良の結果が得られます。

テーマは以下の3つに分かれています。 -

1. 使用可能なコイルの種類

2. 一般的なアプリケーション

3. 新規開発

1. 使用可能なコイルの種類

初期の渦流コイルは、一般に芯を持たない(空芯)コイルであるか、あるいはフェライト芯のみを持つコアコイルのいずれかでした。計測型探傷器がもっぱら使用され、感度は比較的に低いものでした。しかし、ほとんどのケースで適切でした。今も多くの検査で、このタイプの比較的に大型で低感度のコイルが使用されています。

アブソリュートコイル

広く使用されているタイプのコイルは100kHz、直径2.5~5m(0.1~0.2インチ)で、ほとんどのブリッジタイプの旧式計測型探傷器に適合します(図1)。磁場がコイルサイズより十分に大きいため、感度はプローブ直径の約2倍を超える長い割れを許容します。このため大きなエッジ効果も現れます。

図1

現在提供されている適切な代替品として、周囲がシールド(フェライトが望ましい)されている直径約1.5mm(0.060インチ)の小型コイルがあります。この場合、特に短い割れに対する感度が向上し、エッジ、ボルトヘッド部と割れ部の分離が良好になります。 1

旧式のプローブは通常、非常に長い(コイルに対して)、1mm(0.040インチ)または0.5mm(0.020インチ)のノッチを使用して校正しました。その感度はノッチが短くなると急激に低下します。新しいプローブでは、フェライトシールドのほぼ内径のノッチで感度は維持され、短くても検出します。

このタイプのコイルから計測型探傷器は恩恵を受けますが、プローブの走査速度は針が応答時間を要するため限定されます。画面表示型(デジタル)探傷器は、より高速のスキャンに対応できます。大きめの表面タイプのプローブは、上記と同様の方法で応答します。シールドによって、表面近くの割れまたは腐食を探す場合に類似の向上が見られます。

図2

差動コイル

差動コイルは、組込式のリフトオフ補償を持ちます。これは多くのアプリケーションに便利です。

旧式のコイルにはフェライトシールドがなく、単に2つのコイルを並べて作られていました(図3)。近年のタイプには個別シールドが追加されました(図4)。ただし、両方のコイルを共通シールド内に置くことにより、感度が最も改善されました(図5)。差動式のプローブは、小さいサイズのプローブが主に表面割れの検出に使用されています。

図3

図4

図5

このタイプのプローブでは、両方のコイルが反対方向に巻かれています。その結果、両方に同時に影響する信号は相殺されます(リフトオフなど)。通常、エアポイントと作業ポイントは近接しますが、コイルバリエーションのため何らかの相違が存在します。

通常スキャンの方向は示したとおりで(図6)、一般的な信号が表示されます。実際には2倍の表示にすると有用です(図7)。画面でのきずサイズが2倍になるからです。

図6

図7

割れと同じ方向にスキャンすることが必要になることがあります(図8)。これは許容され、結果は非常に短い欠陥の場合と似たものになります。両方のコイルに影響する大きい欠陥は、コイルが反対にあるため相殺される傾向があります。しかし、実際には、角度と深さに十分な違いがあるので、このようなことは起きません。割れの両端部の信号が通常通り表示されます。

FIgure 8


プローブ本体は通常スキャンの方向を示すラインを持ちます。このようなコイルはペンシル、ボアホールまたは成形タイプのプローブに組込み可能で、ほぼすべての形状に適合します。

ブリッジコイルおよび反射コイル

旧式のコイルは通常、ブリッジ構造の2つの分岐に接続されていました(図9)。最近のコイルは、渦流の生成および検出に別個のコイルが使用される反射モードにも使用されています(図10)。

図9

図10

ブリッジコイルは、一般的に良好な性能を示し、特にプローブが特定のアプリケーションおよび周波数向けに設計されているときに良好です。反射コイルでは、多くの場合、ゲインがより大きくなり、動作周波数範囲がより広くなりますが、製造が複雑です。また、ドリフトが少なくなります。 2

反射プローブは、送受信の原理により一定のサイズ/形状を感知する領域を作成する特殊プローブの設計(スライディング型プローブ)にも使用されています。

2. 一般的なアプリケーション

表面割れ
通常の動作周波数

アルミニウム - 100kHz~1MHz
スチール - 1MHz~2MHz
インコネルチタニウム - 2MHz~5MHz

使用可能プローブ
ペンシル型 - アブソリュートまたは差動。シールドまたは非シールド
表面型 - 大径プローブも使用可能
スライド式プローブ - ファスナーヘッド下部から始まる割れ用
ホイールプローブ - ビードシート半径用、成形

表面近くの割れ

周波数は必要な深さに浸透するのに十分低くなければなりません(添付の計算またはグラフを使用)。使用可能な最小周波数は100Hzです。 3

使用可能プローブ :
表面プローブ - 通常は絶対シールド。直径はファスナー間の間隔まで可能
包囲プローブ - 良好な浸透を示す。内径はファスナー頭部の直径に近づける必要がある
スライド式プローブ - 方向性の高速検査用(反射)

ボアホール割れ

周波数は表面割れに従う

使用可能プローブ:
アブソリュート - (シールドが望ましい) 手操作またはスキャナーの場合
差動 - (シールドまたは非シールド) - 手操作またはスキャナー

プローブは広範囲をカバーするもの(直接接触型)とそうでないもの(ホールサイズの少し下)があります。直接接触型プローブは割れをより検知しやすいタイプですが(リフトオフ距離なし)、スキャンノイズが発生します。低周波数タイプを使用して黄銅製ブッシュへの浸透が可能です。自動化システムの実装が可能です。 4

被膜

周波数は被膜のタイプによって変わります。
非導電被膜はリフトオフ測定と見なすことができます。
金属被膜には良好な浸透が必要ですが、それらは通常は非常に薄いため、使用できるのは高めの周波数です。

標準のアブソリュートペンシルおよび/または表面プローブが適しています。

導電率

標準のアブソリュートペンシルまたは表面プローブと導電サンプルを使用して、一般的な探傷器で様々な合金を識別することが可能です。より正確な測定には特殊な導電メーターとプローブが必要です。 5,6

腐食/厚さ

周波数は必要な厚さに浸透可能でなければなりません。添付のEC計算尺またはグラフを使用してください。

最良の結果はシールド表面プローブを使用すると得られます。7,8

3. 新規開発

アルミニウム角度検査

課題は、1回の通過で反対側(アクセス不可)のアルミニウムの割れを高感度で検査することでした。必要な範囲をカバーするために、コイルのリフトオフは約2.5mm(0.1インチ)に設定しています。

改良型のスライド式プローブが、幾度の試行の結果最適であることが判明しました(図11)。1インチ径の刃で生成された15mm(0.020インチ)の最大深さのノッチが検出可能でした。

リフトオフ信号とエッジ効果は、画面上でそれぞれ識別できます。

図11

薄形プローブ

間隔が2mm(0.080インチ)未満の2つの突起間を検査するには、プローブはシールドされたもので、背面では全く検知しないものでなければなりませんでした(図12)。

ステンレス製の強化シールドコイルを先端に付けました。ナイロン製ハンドルを45°で傾けてアクセスしやすくしました。このようなフラットコイルは、スチールとアルミニウムの両方において小さい割れを非常に検知しやすいことが判明しました。

図12

小型スライド式プローブ

スライド式プローブは胴体構造のファスナー間の検査に使用され、小型の角型プローブに比べ使いやすいタイプです。周波数範囲1~100kHzおよび最大2.5mm(0.100インチ)の浸透で方向性応答を示します。

スライド式プローブ透過レンズの調整

このタイプのスライド式プローブの検出範囲は、励磁および検出コイル間です。したがって、レンズは検査に必要な深さまで調整されます(図13)。

図13


ファスナーの並びに沿ってスキャンする際に、この距離を最適化してファスナー表示と欠陥の違いを明確に区別することもできます。レンズがなければ、プローブは最高ゲイン状態で、このためファスナーが大きく表示されます(図14)。

図14

薄型レンズの使用により、ファスナーの表示は小さくなりますが、欠陥はそうならない点が注目に値します。最終的に、ゲインが高すぎない良好な妥協点に達することができます。欠陥は明確に分かる表示になり、ファスナーは比較的に小し動くだけです。幅が広すぎるレンズを使用すると、結果として、非常に高ゲイン設定となり、短い欠陥に対する感度が低下します。 9

図15

透過プローブホルダー

小さいノッチの試験片でプローブを校正する場合、不透明なホルダーで表示を最適化することは困難です。ホルダーは安定化のため必要なので、透明素材を使用して、ノッチ位置を見分けることを可能にします(図16)。校正がより簡単になります。また、頭部に近づきすぎることを避けるために、狭い場所やファスナー間でスキャンする際にも便利です。

図16

高ゲインプローブ

標準タイプの渦流プローブでは、十分な大きさで欠陥を表示できない場合があります。これは形状、欠陥の寸法または通常より高いリフトオフが原因になっている可能性があります。

追加ゲインを得るために、非常に小さいハイブリッド増幅回路をプローブ本体内部またはそこに近い別個の小箱に追加することがあります(図17)。このプリアンプは、必要に応じて特定の検査に合わせて調整可能です。

図17

この追加の増幅によって、探傷器の感度は中程度の設定にまで低くすることができ、結果の信号は以前に比べより良いS/N比を持つようになります。信号が大きすぎる場合に探傷器の入力を飽和させないように注意を払う必要があります。これに対する簡易チェックは、リフトオフとエッジ効果を比較することです。両方のラインが互いに重なり合う場合は、飽和状態が存在し、感度は低下します(わずかな角度の違いが必ずあります)。

一般的なアプリケーションは、最高0.020インチ(プローブは0.040インチ未満のサイズ)のリフトオフを持つディスクのボアホールの試験で、単一プローブサイズを使用できるようにすることでした。

追加ゲインはアルミニウムとチタニウムのサンドイッチ構造を検査するために必要でした。チタニウムは、使用可能なゲインが十分な場合に渦流がアルミニウム層まで浸透できるようにします。残念ながら、アルミニウムがチタニウムを覆っている場合、導電率がアルミニウムに比べかなり低いため渦流はここに浸透せず、アルミニウムはシールドのように動作します。

複数のプローブが必要な場合は、いくつものプローブまたはコイルを多重化して単一の探傷器を使用することが可能です。 10

参考文献

1. 『Shielded E.C. Probes』
Process Laboratory Report
The Physical Sciences Laboratory Branch, Directorate of Maintenance,
Sacramento Air Logistics Center, McClellan A.F.B. Project No. 81-497-085,
Donald M. Bailey

2. 『E. C. Development Activities』
Walter J. Harris, Boeing Commercial Airplane Co., ATA 1981

3. 『Low Frequency E.C. Inspection of Aircraft Structure』
D. J. Hagemaier and A. P. Steinberg, Douglas Aircraft Company ATA 1980

4. 『Update on Automated E.C. Inspection System』
Art Thompson, G.E. Evendale, ATA 1983

5. 『Boeing Process Specification』 BAC 5946

6. 『Evaluation of Heat Damage to Aluminum Aircraft Structures』
D. J. Hagemaier, Douglas Aircraft Company, ATA 1981

7. 『A General Procedure for the Detection and Measurement of Corrosion in Aircraft Skins Using E.C. Equipment』
J. Pellicer, Staveley NDT Technologies, Inc., NORTEC Division, ATA 1984

8. 『Aircraft Corrosion and Detection Methods』
D. J. Hagemaier, A. H. Wendelbo, Jr., Douglas Aircraft Co., ATA 1984

9. 『Sliding Probes with Transparent Lens』 Technical Bulletin
J. Pellicer, Staveley NDT Technologies, Inc., NORTEC Division

10. 『Application Advancement in E.C. Using Pre-Amplifiers and Multiplexers』
J. Pellicer, Staveley NDT Technologies, Inc., NORT EC Division,
ASNT Spring Conference, Tulsa, OK 1986

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