用途
金属部のスポット溶接ジョイントの状態を評価します。
背景
スポット溶接は、金属を接合するための一般的な技法であり、主に薄鋼板や板金などの接合を、一連の小さな円形タックジョイントで行います。 この溶接手法は、自動車産業でボディーの組立てやシャシーの接合に広く利用されており、他の種類の薄鋼板の接合にも用いられています。 スポット溶接は、接合する部品の両側に電極を押し当てて高電流を流すことにより、金属が瞬時に溶融してから固まり、「ナゲット」と呼ばれる丸い接合部を形成するものです。
溶接部が正しく形成されないと、2つの部品が完全に接合しないか、ナゲットの面積が小さすぎて、必要な接合強度が得られません。 これらの問題は光学的検査ではほとんど検出されません。また、プル試験では効率が悪く、検査対象が抜き取りした試験サンプルに限定されてしまいます。 これに対して、適切な機器と手法を用いた超音波スポット溶接部検査では、溶接品質に関する貴重な情報をすばやく非破壊で得ることができます。
機器
スポット溶接部検査に推奨される機器は、EPOCH 650やEPOCH 6LTなどの探傷器です。 スポット溶接部試験では、通常は直径3~6 mm(0.125~0.250インチ)のカップ形溶接部に超音波を通し、 高周波の底面エコーを数回発生させます。 オリンパスでは、この用途向けに、周波数範囲10~20MHzの遅延材付き探触子とウォーターカラム保護膜タイプの探触子を幅広く提供しています。 遅延材付き探触子は、小さいプラスチック製のウェーブガイドを使用して、探触子の振動子が発する超音波を試験対象に伝搬させます。 ウォーターカラム保護膜タイプの探触子は、柔軟なゴム製の被膜を内蔵しており、スポット溶接部の形状に倣った水柱を包み込むことで、超音波の伝達効率を高めます。 遅延材付き探触子の場合、遅延材の直径と振動子径は、通常、ナゲットの公称径と数十ミリ以内の誤差で一致します。 水浸型探触子の振動子径は、通常ナゲットの公称径と一致します。 探触子の選択の詳細については、弊社までお問い合わせください。 |
測定法
溶接の品質が高い場合、エコーの間隔は溶接部の厚さに比例し、減衰速度(連続するエコーの振幅が減少する割合)は、ナゲット内部での減衰に関連します。 各溶接の状態(良好、未溶接、溶接サイズ不足、およびスティック溶接)には、それぞれ特徴的なエコーパターンがあります。 テンプレート保存ソフトウェアオプションを使用して、各溶接状態のエコーパターンの輪廓を保存して呼び出せるようにすることをお勧めします。 各エコーパターンは、ボタンを押すだけでライブのAスキャンに重ねて表示できるため、比較が容易なうえ、検査の精度が高まります。 複数のテンプレートを保存することができ、「-A-」は現在表示中のテンプレートがどれかを示します。 | |
2つの金属片の間に溶融が発生していない場合(「溶接なし」または「未溶接」状態)、連続するエコーの間隔が短くなり、振幅が大きくなります。 | |
溶接部のサイズ不足の場合は、超音波の一部のみが2枚の鋼板の厚さを反映し、残りは片方の厚さしか反映しません。 この場合は、溶接部全体の厚さを表す、振幅が大きくて間隔が広いピークの間に、片方の鋼板の厚さを表す小さいピークが現れるという波形になります。 | |
最後に、スティック溶接状態では、鋼板は溶融していますが、熱が不十分であったためナゲットが完全に形成されず、エコーの減衰速度が変化し、その結果、振幅の大きなピークの波形となり、リングダウン時間が長くなります。 これは、完全に形成された溶接ナゲットによる粒界散乱効果が得られず、完全に形成された場合と比較して、溶接ゾーンの透過性が高くなっているためです。{ |