品質マネジメントシステムの測定に対する要求事項と解説
ISO 9001:2015 IATF 16949:2016
ISO 13485:2016
概要
医療機器産業に特化した品質マネジメントシステムの国際規格です。
顧客要求事項・規制要求事項を満たす製品・サービスの提供を実現するための規格です。ISO 13485:2016 は、ISO 9001 :2008のプロセスモデル(Plan-Do-Check-Act)に基づいていますが、法規制順守を達成するために設計されているという特徴があります。このことから、より規範的な性質を持ち、より徹底的に文書化された品質管理システムを必要とします。対象は医療機器・体外診断用医薬品のライフサイクル(設計・開発、製造、保管、配送、据付、付帯サービスなど)に関与する組織です。
参照規格のISO 10012では測定の不確かさ及びトレーサビリティ に対する要求事項があり、ISO/IEC 17025:2017の要求事項に適合している試験所は、信頼できるものとしてもよいとされています。
規格の構成と測定に対する要求事項
構成
ISO 9001:2008 のプロセスベースをモデルに設計されています。
まえがき
5 経営者の責任
序文
6 資源の運用管理
1 適用範囲
7 製品実現
2 引用規格
8 測定、分析及び改善
3 用語及び定義
9 付属書A、付属書B
4 組織の状況
測定に関する要求
測定に対する要求は、「7.製品実現」内の「7.6 監視機器及び測定機器の管理」で確認できます。
7 製品実現
7.1 製品実現の計画
7.2 顧客関連のプロセス
7.3 設計・開発
7.4 購買
7.5 製造及びサービス提供
7.6 監視機器及び測定機器の管理
測定に対する要求事項
ISO 13485:2016の測定に対する要求事項は基本的にISO 9001:2015と同じ部分が多いため、 ここではISO 9001:2015との違いを解説していきます。
7.6 監視機器及び測定機器の管理
規定した要求事項に対する製品の適合性を実証するために、組織は、実施する監視及び測定を明確にする。また、そのために必要な監視機器及び測定機器を明確にする。
組織は、監視及び測定の要求事項との整合性を確保できる方法で監視及び測定が実施できること、及び実施することを確実にする手順を文書化する。
測定値の妥当性を保証するために、必要がある場合は、測定機器に関し、次の事項を満たす。
a) 定めた間隔又は使用前に、国際計量標準又は国家計量標準にトレース可能な計量標準に照らして校正若しくは検証、又はその双方を実施する。そのような標準が存在しない場合には、校正又は検証に用いた基準について記録する(4.2.5参照)。
b) 測定機器の調整をする、又は必要に応じて再調整をする。そのような調整又は再調整は記録する(4.2.5参照)。
c) 校正の状態が明確になるような識別がある。
d) 測定した結果が無効になるような操作ができないようにする。
e) 取扱い、保守及び保管において、損傷及び劣化しないように保護する。
組織は、文書化した手順に従い、校正又は検証を実施する。
さらに、測定機器が要求事項に適合していないことが判明した場合には、組織は、その測定機器でそれまでに測定した結果の妥当性を評価し、記録する。組織は、その装置及び影響を受けた製品に関して、適切な処置をとる。
校正及び検証の結果の記録を維持する(4.2.5参照)。
組織は、監視及び測定の要求事項のために使用するコンピュータソフトウェアの適用のバリデーションの手順を文書化する。このようなソフトウェアの適用は、初回の使用前にバリデーションを行う。また、適切な場合、そのソフトウェア又は適用への変更後にバリデーションを行う。ソフトウェアのバリデーション及び再バリデーションに関する固有のアプローチ及び活動は、製品がその仕様に適合する能力への影響を含むソフトウェアの使用に伴うリスクに見合ったものとする。
バリデーションの結果及び結論並びに必要な処置の記録は、維持する(4.2.4及び4.2.5参照)。
注記 更なる情報は、ISO 10012を参照。*1
POINT
ISO 13485:2016 とISO 9001:2015の測定に対する要求事項の違いは以下の3点です。
1. 手順の文書化の明記、及び記録することが明記されています。
2. ソフトウェアのバリデーションを実施し、手順の文章化が必要です。
3. ISO 10012を参照規格としています。
ISO 10012 では、「7.3 測定の不確かさ及びトレーサビリティ (ISO/IEC 17025)」の要求が以下の通り明記されており、不確かさを評価し、記録する必要があります。
7.3 測定の不確かさ及びトレーサビリティ
7.3.1 測定の不確かさ
測定の不確かさは、計測マネジメントシステムの対象となるそれぞれの測定プロセスについて、推定しなければならない(5.1参照)。
不確かさの推定値は、記録しなければならない。測定の不確かさの分析は、測定機器の計量確認及び測定プロセスの妥当性確認の前に完了しておかなければならない。測定のばらつきの既知の原因は、全て文書化しなければならない。*2
7.3.2 トレーサビリティ
計量機能の管理者は、全ての測定結果に国際単位系(以下、SIという。)までの確実なトレーサビリティがあるようにしなければならない。 測定のSIまでのトレーサビリティは、適切な一次標準を基準とするか、又はその値が関連するSIで既知のもので、かつ、国際度量衡総会及び国際度量衡委員会が推奨している自然定数を参照して達成しなければならない。 合意があれば、SI又は認知された自然定数が存在しない場合に限って、契約時に使用することが合意された標準を使用しなければならない。*2
手引
トレーサビリティは、通常、国家計量標準まで自身のトレーサビリティを確保している信頼できる校正試験所を通じて達成する。例えば、ISO/IEC 17025の要求事項に適合している試験所は、信頼できるものとしてもよい。
国家計量機関は、国家計量機関以外の施設が国家計量標準を保有している場合を含めて、国家計量標準及びそのトレーサビリティの責任機関である。測定結果は、測定が実施された国以外の国家計量機関を通じてトレーサビリティが確認されていてもよい。 認証標準物質を、参照標準とみなしてもよい。
測定結果のトレーサビリティの記録は、計測マネジメントシステム、顧客、法令・規制要求事項が求める期間を維持しなければならない。*2
POINT
不確かさを評価し、記録する必要があります。
ISO/IEC 17025認定校正をトレーサビリティ確保の手段として推奨しています。
*1 ISO 13485:2016から引用
*2 ISO 10012から引用
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